羅漢像ひとりぐらいは騙せそう 若林よしえ
ずらりと並んだ羅漢さま。
十六羅漢、十八羅漢‥‥
いや本作のずらりは、やはり五百羅漢。
それほどの数おわすれば、
確かに、騙せそうな御仏も
一体くらいはいらっしゃりそう。
などと、これまでに出会った五百羅漢を思い返す。
山中の像は、尊顔の多くが風化していつつ
その顔なき顔にもやわらかな表情があった。
そう、だからたぶん、
わざわざ騙そうとせずとも、羅漢像みな、
すべてを受けとめてくれるはず。
でも、決して騙せないのは自分自身。
ユーモアにくるみつつ、
そんなことにどきりと気付かせてくれる句に
ふと旅情を誘われてもいる。
(句集『明日』 若林よしえ/かもめ舎川柳新書 左右社)
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