そのうちに走り出すのがカバである
河村啓子
地上最強の生きものはなにか。
ライオン、ゾウ、ワニ、クマ・・
おなじみの候補があがる中、
あるバラエティ番組で、最強認定されたのはカバだった。
ふだん動物園やキャラクターで親しんでいるカバは
温厚でやさしい、かわいいイメージ。
けど、野生のカバは相当獰猛な面も持っているらしい。
また走り出すと、その測度は時速30キロ、いや40キロ以上とも。
つまり本気を出すと、まったくスゴイやつなのだ。
だから掲句のカバは、
今は本気を出していないだけ。
と、目の前のごろろんカバのことを
誰よりも理解している主人公は
そのうちに再び走り出す日を信じ、
待ち望んでいるのだろうか。
あるいはおそれている?
もしかしたら、本音はこのままでいてほしい?
さてもカバ。
鋭い牙を持ちつつ、基本草食性。
実はお肌繊細で乾燥に弱い、など
いろいろギャップ萌えさせ、
そして絶滅危惧種でもある。
(『精鋭作家 川柳選集 近畿篇』新葉館出版 2020)
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