2026年3月

プライドがごめんごめんと袖をひく
出る杭になれと師匠は言い残し
立ち食いに邪魔なプライド打ち首に

飛伝応

この部屋の隅が私のいる現場
多様性とは何ですかいちごパフェ
表裏あってビールとハイボール

平尾正人

無理ですよ一人外出鴉の目
突然に縮んでゆくんだなあ頭脳
長生きのチケット背中のサロンパス

弘津秋の子

津軽弁少し練習して津軽
梅食べて梅ばあさんはここにあり
竜が今 天を仰ぐと龍の道

藤山竜骨

音楽の先生いつも夢見がち
曲がるたびまあるくなっていく言葉
ワンさんはきっとあの娘に会いに来る

峯島 妙

‘Ohanaとは愛とは ほうじ茶の旨さ
日にいちど笑っていいよ台布巾
大寒波なっとう二十回まぜる

宮井いずみ

バカやって終わろそうだなサンバとか
からだひとつあるものだけでやっていく
滅亡するねほらアイスでも食べよっか

本海万里絵

寒紅梅まじろぎもせず見る空は
のど飴ののどに届かぬ焼け野原
笑ったり泣いたり唐辛子追加

森平洋子

白鳥に成れずに飛べずのアヒルの子
郭公の托卵既にバレている
胸の奥耳の深くに残る声

森 廣子

君の名のシンメトリーが呼びかける
介錯はいらないストリートピアノ
森はまだ冬のシールを剥がせない

山崎夫美子

空席がわらえば列が消えるけど
退学のあとの廊下をなめる犬
七人目だけがしろいとひらく春

山本絲人

おばさんの趣味はオセロと西部劇
大雪にずっと待ってた停留所
バス運休知らずに待った半時間

吉田利秋

迷信はどうでもいいや夜の爪切り
15までなぞり安心する鼓動
ウフウフと笑い出す雪原 2月

四ツ屋いずみ

鉄人に拍手している新長田
鉄人様 スタンディングオベーション
母を看る わたくしと対話している

渡辺かおる

雨風に打たれて雪に抱かれて
捨て方の作法 微に入り雪に入り
雪晴れ間 あっ大根が息してる

吾亦紅

ガムテープ剥がせば春の顔覗く
草木にも冷蔵庫にも手を合わす
なだらかを目指せば神は怒らない

浅井ゆず

春の喜怒みんなしじみの殻の内
主体性って何よ僕私俺
二月尽銀行跡地ローソンへ

朝倉晴美

雛祭り部長に話しかけてみる
食パンに収まっている丸い窓
荒っぽい暮らしの中の金魚様

石野りこ

土曜日は大学芋とたわむれる
鯛焼きの尻尾の色が気になって
どら焼きの銅鑼を鳴らしてみましょうよ

伊藤良彦

名言がこっちを向いて睨んでる
凪の朝開花予報は闇の中
凍蝶の鼓動が闇で再起動

稲葉良岩

ビー玉は一番星を離さない
躑躅でも姉でもなくて赤かった
先人のカップの取っ手かもしれん

岩田多佳子

前髪の長さ決めかね雪の嵩
眠ってはならぬ老いも若きも筋トレす
面倒をみるよと蘭に囁いて 

海野エリー

雪は降る背中のシーラカンス泣く
足元の昨日のぼくと春を待つ
春風が言葉になってやって来た

おおさわほてる

大寒波キリンの首がだるそうだ
嫌いだな土足で降ってくる雪は
トンビにも素数をひとつ投げてやる

大竹明日香

祖母の指環母の指環と水になる
滲ませてしまう腎臓水銀灯
暖をとる全身に蝶群がらせ

小沢 史

挨拶してくる瑞々しい刃物
正しさはそんな顔しておりません
泣いてると仮定して見る後頭部

小原由佳

火渡りや山中に法螺鳴り響く
燻されて嗄れ声の寒鴉
不動にんまり弛む凍天

笠嶋恵美子

お別れの言葉をオレンジで染める
どこでもドアがある午後の古本屋
半分と折り合った上弦の月

桂 晶月

ヴィヴァルディの春だ大人の吹き出物
ぷわぁーと夫ひやぁーと私みゃーと猫
撤収と叫び深追いせぬことに

川田由紀子

どの闇をくぐり鰯の目に泪
降りそそぐとっても温い土団子
集落にある必然と偶然と

河村啓子

ひとつ 深夜と早朝の隙間まで手をつないでてさ
ふたつ ほんの1センチもない距離にキミの笑顔が
みっつ 柔らかくてあたたかくてでもすぐ消えそうほら

寒雷

寒いちご指紋の溝を黙らせる
雪の縞いずれは川になる話
風を聴きたし越冬の毛糸玉

菊池 京

二ン月の鬼門も過ぎて拭くガラス
ヤブサメのシシシシシシシ干すシーツ
二人しておむすび結び菫野へ

北川清子

欠点も長所も打たれ強いこと
支持率アップ狙い今夜はハンバーグ
覗いたらわっと笑顔が飛び出した

黒川佳津子

白蝶の不満噴出 舞台暗転    
うっかりと飲み干す春の発泡酒
鳥雲にザラメ夥しく焦がす

黒田弥生

資本主義終えて整うセルフ油脂
舌の根に余る非必須アミノ酸
5歳から飲んでる顔で口説くなよ

河野潤々

芽吹きだす冬から春のほとりから
またたきははるか本質を捉えて
えんぴつは飛びたい意味の無い世界

斉尾くにこ

黙ったままが二階から降りてくる
マフラーが絡みつく夜の北斗星
また出会う猫の病を知っている

重森恒雄

晩年は記号になって生きようよ
ベロは純情 舌は時々嘘をつく
黄昏にとても見事なうっちゃりを

芝岡かんえもん

指揮棒へ変わる五歳のうまい棒
シャツ出して駆けるトイレのスーパーマン
空白は必死の跡育児日記

島貫麻衣子

石鹸の泡とあんたは置いてくる
咳の身を隠す 積乱雲の中
鬼が来る 隣の席は自由席

杉山昌善

一生涯かけてあつめた灰でした
囀ればいつかは風になれるはず
うららかにかすかにかなしみはみちて

たかすかまさゆき

破裂音 五臓六腑のここかしこ
リベンジをミートボールに詰めておく
地上波に帰るとさくらさくら さくら

浪越靖政

春だから名もなき夢の散らし書き
架空から零れつづける砂時計
あれこれをかき混ぜつくる春の論

西田雅子

お互いさまと木枯らしに出すハーブティ
記憶の森はげしく壊す日曜日
龍頭巻く父の時間は後わずか

西山奈津実

ベランダのどのパンジーも破滅型
春分のそこはかとなき手品ショー
ここもまた辺境甘いカプチーノ

芳賀博子

春生まれ花粉飛び交い春の乱
窓際に横一列の傍観者
コーヒーの渦に巻き込むいい話

林 操

会員作品を読む 2026年3月 芳賀博子

会員作品第56回をお届けします。

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