今日の一句 #567

白昼にしゃがんでは立つ芒原
畑 美樹


芒原は私にとっても原風景のひとつ。
街中で生まれ育ったけれど
芒原をみると、初めて訪う場所であっても
懐かしく、心がさわさわする。

手元の辞書には
芒・薄は、尾花とも称し、秋の七草の一。
屋根を葺くのに使用したため、カヤともいう。
といった解説とともに
万葉集の歌も紹介されていて、
古代より芒にさまざまに親しんできたDNAが
この体内にも組み込まれているのかも、

などと改めて思う。

さて掲句。
「しゃがんでは立つ」という
小さな、終わりと始まりの行為が
芒原の重ねきた終わりと始まりにつながり、

そう、またここから、と
ポジティブな余韻を時空間に広げる。
「白昼」の強い一語も、「立つ」と響き合い、
穂をより輝かせて。



(句集『雫』 畑 美樹/編集工房 森樹 1999)

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