引っ越しの度に、また実家のかたづけの度に、どうしようか迷うのが壺。たしか、何かのお祝いかお礼にいただいたもので、今では誰からのものかも忘れてしまっている。
壺とは、胴が丸くふくらみ、口と底が狭くなった形の容器。古代にあっては、主要な酒盛りの器で、もともとはサイコロ賭博を行うときに使う「壺皿」という入れ物のこと。博打で采(さい)を入れて伏せる器で、壺というよりは、植物を編み込んで作る籠のようなものだった。
「壺」という字は象形文字で、上部の「士」は壺のフタをあらわし、中ほどのひょうたん型は壺の腹を表している。「つぼ」という音は、壺の形が丸くふくらんでいるので、「つぶら」「粒」など丸いものを表す「つぶ」に通じ、また、口と底がつぼまっていることから、「つぼむ(窄む・蕾む)」に由来するという説もある。
「思う壺」ということばがあるが、熟練の壺振り師がサイコロを振る際に自分の狙った通りの目を出せるというところからこの意味になったとか。
わが家では存在感があり、それなりに部屋になじんでいる壺。なかなか断捨離はできそうもない。
壺のある部屋のどこかにヒビがある 重森恒雄