詰めるだけ詰めて狸になっている
能面のほぐれほぐれている涙
あたたかいお粥すすっている強気
藤山竜骨
寒さ深まり銀杏並木に木の葉舞う
ロングヘアなびかせ散歩落ち葉舞う
あさまだき顔洗う水凍み渡る
堀本のりひろ
吐けなくて意固地になった蜆汁
渡ったら最後と知っているカモメ
暖冬に飽きて猫ときどきアナタ
峯島 妙
ぎんなんの剥き方地球の救い方
設定に無理ヒロインはえのき茸
思い出し笑い止まらずミルク飲む
宮井いずみ
三日月を刺して生まれ変わりたいな
そんなとこもなんだか愛おしいなって
永遠を願うくらいに大好きだ
本海万里絵
他人事一拍ずれるリアリズム
何が正解だったのか時雨香
冬空を跨いでゆけば月の寝息
森平洋子
躊躇いも見せず落ち葉が散って行く
サボテンの愛を上手に受け止める
木犀の香りは僅かもう居ない
森 廣子
読みかけの本に降り立つレモン彗星
曇天をくしゃくしゃにして宅急便
炎症が起きているはず管楽器
山崎夫美子
突然の老いが私にやって来た
正直に受ける支援の面接を
市長から要支援2の通知あり
吉田利秋
南へ西へお伊勢様の号令
迷いなくいさぎよく雪に黄落
せわしさは織り込んでみる雪空に
四ツ屋いずみ
サビシクテ犬の糞さえ温かい
遣り残し自分探しの未知の駅
ルーティンを覚え寄り添う犬と居る
渡辺かおる
指先のしびれ明日を吸い込んで
日溜まりにカラフルな雪の文字盤
駆け抜ける 夜の匂いの水たまり
吾亦紅
つらつらと出て来ぬ言葉秋湿り
天からじゃなかったツーと蜘蛛の糸
はしゃぎ過ぎたあとの霜枯れ注意報
浅井ゆず
十三で降りるべきかそれが問題だ
今は秋発足会をハシゴして
0番線見つけた君は知らぬ存ぜず
朝倉晴美
三時間シールを剥がす大夕焼
白菜をクタクタにさせ大晦日
千年の方向違いネコジャラシ
石野りこ
病室の夜景がなぜか美しい
カーテンの影に抗がん剤の音
親切な人がたくさんいて困る
伊藤良彦
穴あきの手袋からのサプライズ
しゃがんでも背中にそっと灯る棘
ひとり鍋ふんわり笑うスープの音
稲葉良岩
青青とめらめら隠しもつお米
目には目ぐすり摩天楼したたらし
かもしれないと歌う予報士
岩田多佳子
語り尽くすまでをゴッホの耳借りる
大落暉の海に溶けだす思考力
滝壺に真っ赤な落葉我を通す
海野エリー
突然にコスモスからの電話です
コスモスの胸を開いて抱きしめる
痛むのよコスモス生えていたところ
おおさわほてる
アサギマダラ着陸許可は千年後
マシュマロは朝から宇宙遊泳中
時差ボケのせいね夜空を舞う指紋
大竹明日香
砂利道の足から耳へ胸にまで
紺色の深いところで明日会う
カタカナのトモダチにふと書き換える
小原由佳
月を見て泣くのはおよし屋根の猫
小悪魔がにっこり笑うコンパクト
月光を浴びると髪が匂い立つ
笠嶋恵美子
わがままを氾濫させてひとり鍋
諦めたひとつゆるゆるかきまぜる
結界を張り直しておいた夜長
桂 晶月
あちこちの痛いところに冬薔薇
寝床から虹を担いでいく少女
マジックアワー今日は自分を褒めてやる
川田由紀子
あら秋のこんなところで会うあなた
ノクターン引き返すのは御自由に
苛立っていたのはそこの金木犀
河村啓子
今日はまだ手をつないでくれるかなとドギマギ
久しぶりの公園ブランコちいさくなったねえ
娘との日々いつか終わるそれがどうした
寒雷
マネキンも一度は濡れてみたい雨
革命を弾きたがる調律の指
正論の箸は粛々と尖る
菊池 京
ぼーっとしてあさってのふねにのる
ふねにのったらついたひかりのみさき
ひかりのみさきひとはぼーっとして
北川清子
ぬるま湯に脱力しだす干しわかめ
来年の今ごろ思い編む帽子
冬紅葉きりんは首を振り回す
黒川佳津子
神々の寝息 雲海一面の
極月のLEDに似て希薄
頽れて嗚呼と王とも聖菓とも
黒田弥生
オチカブが春闘面でやってくる
マッチングアプリのプリがせわしない
プチプチプスッと尺取虫弛緩
河野潤々
左手をそっと添え右手で手錠
不安定な夜はぶらんこのひとひら
ふるごとく雅楽奏でる秋の森
斉尾くにこ
心窩部で大きな月になっている
夢のない話に添えるソーセージ
何日も食べずに柿の木に登る
重森恒雄
礼節を知る歳になり言い負ける
カタカナを脱いで今宵はひらがなに
今日もまた妻にむかって正座する
杉山昌善
比喩という比喩の湯上がる風呂上がり
湯冷めして二度と会えないひととなる
冬ざれてやさぐれてややへこたれて
たかすかまさゆき
紅葉散る不徳の致すところから
うす味に次々されていく時間
だけれども結果オーライとも言える
浪越靖政
秋の季語出しっぱなしのまま冬へ
引出しに溜まったままの「まっいいか」
来年の聖夜も舟を待つでしょう
西田雅子
エコバックにすっぽり入るボクの海
気泡つぶして天使ふたり消してみた
風飼ってみたが案外手強いね
西山奈津実
旅をする炭酸を飲まない猫と
律儀なひとのために心臓を編む
注意深くガムを噛む冬の椅子で
温水ふみ
約束と裁縫箱の持ち重り
鼻歌がぽこぽこ生んでいる鯨
いちめんに葱を散らして厄払い
芳賀博子
お手製の干し柿届く外は雨
銀杏並木しゃれたコートが欲しくなる
迷子もいいな薔薇に見とれているうちに
林 操
そうかこの大往生を見習えと
思い出はいつまでも師はいつまでも
旅に出て越後の飯のありがたき
飛伝応
かかりに行きたい遊園地の魔法
フィルターの機能が付いている瞳
忍び込む不安後頭部の辺り
平尾正人
約束を度忘れ 夕焼けの懺悔
赦されてお風呂も丁度よい温さ
迷ったら水を飲むこと亡母の声
弘津秋の子

