Vol. 89 雲

 空に浮かんでいる雲は、そのときそのときで形が全く違い、ずっと見ていても飽きない。子供の頃のように、晴れた日、原っぱに寝転がって何時間でも空を眺めていたいと思う。

 雲(くも)の読みの由来は諸説あって、一つは「隠る・籠る(こもる)」で、太陽や月を隠してしまうその姿から「隠る」を当て、それが訛ったもの。また一つは、雲が、空が水を「汲み」あげてできることから、「汲む、組む」がやはり訛って「雲」になったという説。

 雲という漢字は「雨+云」で成り立っている。天の雲から雨水滴り落ちる「雨」と、雲が回転する様子を表した「云」から「雲」という漢字ができた。

 雲ひとつない青空は気持ちがいいが、空に吸い込まれそうでちょっとこわくなることも。入道雲、鰯雲、羊雲、すじ雲 … 。雲が季節を連れてくる。立春が過ぎ、春の雲が待ち遠しい。

  くちびるは天地をむすぶ雲かしら  飯島章友