今日の一句 #609

合掌のままで飛んでる水たまり
川守田秋男


水たまり、というと、
〈母はまだひとりでまたぐ水たまり〉
と、森中惠美子さんの代表作がよぎり
「水たまり」は氏の句集のタイトルにもなっている。


一方、今日の一句は
年一回発行の
「川柳カモミール」最新号に掲載された
川守田秋男さんの作品。
一読、私の体もちょっと浮いた。
「飛んでる」の現在形は、
目の前の大きな水たまりを、えいっと、
今まさに飛んでいる瞬間なのかもしれないし、
あるいは、水たまりは幾つもあって、
次々に飛び越え続けているのかも。
「合掌のまま」で。

さて、なんのための合掌なのか。
その肝心なところは読み手に委ねられている。
合掌という一語が湛える喪失感と希望。

が、頭上と水たまりに広がる空は
きっと明るいブルー、ブルー。

以下も会員作品から。
 月蝕が始まる 本心を聞こう   潤子
 母さんのお墓はいつも話し中   守田啓子
 今日も晴カミツキガメと牛乳屋  細川 静
 春雷やここは踏みとどまる時ぞ  滋野さち
 ニンニクの芽が出て祭.com            笹田かなえ

(「川柳カモミール」第7号 川柳カモミール句会 2023年9月)

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