Vol. 131 案山子

 田園風景に欠かせないアイテムの一つで、自然の風景にすっかりなじんでいる人間が作った案山子。

 案山子の語源は、「嗅がし(かがし)」ではないかと言われている。田畑の作物を狙うスズメやカラスなどの有害鳥獣を追い払うため、髪の毛や魚の頭などを焼き、串に刺して立てたそうで、悪臭で追い払っていたことから、嗅がし(かがし)と呼び、次第に「かかし」に。

 竹や藁で作った人形が使われるようになってからも、しばらくは「かがし」が用いられており、「かかし」という清音形は近世以降に関東地方から始まり、関西地方でも「かかし」が使われるようになったのは江戸時代後半である。

 漢字の「案山子」は、元々中国の僧侶が用いた言葉で、「案山」は山の中でも平らなところを意味し、「子」は人や人形のことで、「かかし」の当て字に「案山子」が用いられるようになったと考えられている。

 地域によって「おどし」「そうず」などさまざまな呼び名がある。

  しまわれる案山子薄うく目をあけて  平賀胤壽