三角に折られた過去を持つ鳥だ
城水めぐみ
といわれなければ、過去の折り目に気付かなかった。
三角はいったんひらかれ
丁寧に折りなおされて、
今はもう羽ばたかんばかりの姿。
いやすでに自由に自分の空を飛んでいそうだ。
だから、過去なんてすっかり忘れていいのに
もしかしたら、かつての折り目に
しくっと痛みをおぼえたりする日もあるのかな。
さて、無造作に三角に折ってしまったは誰だろう。
違うよね、と折りなおしてくれたのは誰だろう。
ひょっとして、どちらも自分自身?
おしまいの「だ」の断定の助動詞が
屈託の余韻をさりげなく強く残す。
出典は昨年末に刊行された
城水めぐみ氏の第一句集『甘藍の芽』。
増えたのは楕円を円にするくすり
水晶婚答え合わせはまだ早い
ともだちの蓋はやさしく閉めましょう
滴ると不協和音になる果実
駱駝から降りると町も人も雨
手にとりながら、ふと湖を思った。
透明度の高い、こころのかたちをした湖。
その穏やかな湖面の下には
底へゆくほどさまざまな感情が泡立っていて
すっと浮き上がっては、ページに弾け
みずみずしい光を放つ。
(句集『甘藍の芽』 城水めぐみ/港の人 2023)
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