「虫のことば」は、命を伝える手段。
鳴き声だけでなく、模様や光、においも…
2月4日(日)、市立伊丹ミュージアム館長の奥山清市さんをお迎えし、「虫のことば」をテーマに第7回ゆにゼミを開催しました。
第1部は、奥山先生の講演。「虫って何? 昆虫とどう違うの?」というそもそもの話から、今回の主題である「虫のことば」へ。スズムシ、マツムシ、カンタン、コオロギ、セミなどの鳴き声は、すべてオスからメスへの求愛。寿命が短く、食うか食われるかという厳しい世界に生きる虫にとって、鳴くことは次の世代へ命を渡すための重要な任務であること。そして、鳴かない虫たちも、たとえば、蝶は翅の模様で、蛍は光で、蛾はにおい(フェロモン)で求愛していると教えてくださいました。また、世界の中でも日本人がいかに虫に対して繊細なまなざしを持っているか、など話は次々に刺激的に展開し、「虫は自然の変化や命のはかなさ、自然と共に生きる大切さを教えてくれる生き物です。忙しい日々ですが、暮らしの中で虫の存在に気づいて、虫とことばを交わしてください」という締めの言葉に思わず大きく頷きました。
第2部は川柳句会です。今回の事前投句の題はずばり「虫」。最初に互選方式で、参加者が選んだ推しの2句を発表。つづいて、選者(ゆに会員・菊池 京さん ゆに副代表・西田雅子)による入選句の披講。お互いの選句の違いにも触れ、鑑賞を深めました。最後に奥山先生から感想をお聴きできたのも楽しかったです。
ゆにゼミの閉会後は、自由参加によるフリー・トークタイム。それぞれの選評を述べ合ったり、作者に率直に質問したり。と、なごやかな空気の中で「実は虫は大の苦手で…」という衝撃の告白には一同大笑いで、さらにトークが盛り上がったり。講演や句会で虫の知られざる魅力や神秘に触れ、虫好き派も虫苦手だった派も「虫」の世界に惹きこまれたゆにゼミでした。
当日の入選句です。
第7回ゆにゼミ 句会【虫】入選句 2024年2月4日
◆菊池 京 選 | |
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入選 | |
虫食いの穴の向こうの銀河系 | 森平洋子 |
昆虫食のために生きてるわけでない | 浪越靖政 |
繭の中孤独を食べて詩を紡ぐ | 西田雅子 |
泣き虫のスゝメ午後から一時雨 | 須藤しんのすけ |
一斉に言葉にできぬ虫放つ | 川田由紀子 |
特選 | |
分身の翅は私よりブルー | 芳賀博子 |
◆西田雅子 選 | |
虫食いの穴の向こうの銀河系 | 森平洋子 |
すっぴんで素足で冬の誘蛾灯 | 菊池 京 |
逡巡の百足に百の目的地 | 黒川佳津子 |
Googleに沈むフリーウェイの蜻蛉 | 河野潤々 |
バッタの脚”Money,money,money”と運ぶ蟻 | 宮井いずみ |
特選 | |
やわらかに覚醒 羽化がはじまった | 斉尾くにこ |
【虫】 互選 | |
アメンボは気にせずとうに対岸へ | 小原由佳 |
虫食いの穴の向こうの銀河系 | 森平洋子 |
飛翔するカナブンぼくは翔平だ | 宮井いずみ |
デコルテも虫に刺された痕がある | 須藤しんのすけ |
好かれたくてピンクになった虫だけど | 藤田めぐみ |
手がかりをなくした冬のルリタテハ | 山崎夫美子 |
カタクリの花が咲いたら目を覚ます | 重森恒雄 |
すっぴんで素足で冬の誘蛾灯 | 菊池 京 |
やわらかに覚醒 羽化がはじまった | 斉尾くにこ |
夫より手のひらにけら誕生日 | 北川清子 |
逡巡の百足に百の目的地 | 黒川佳津子 |
繭の中孤独を食べて詩を紡ぐ | 西田雅子 |
Googleに沈むフリーウェイの蜻蛉 | 河野潤々 |
寒風の河原の虫よ梅の花 | 弘津秋の子 |
分身の翅は私よりブルー | 芳賀博子 |
泣き虫のスゝメ午後から一時雨 | 須藤しんのすけ |
蜩が聞こえる夜の手術室 | 伊藤良彦 |
てふてふが硝子を抜けていった跡 | 西田雅子 |
うたたねのとちゅうでアリと目があった | 河村啓子 |
カメ虫の来訪消えし雪の窓 | 弘津秋の子 |
モスキート音と外せぬ知恵の輪と | 菊池 京 |
触覚の先の先までスネてみる | 芳賀博子 |
少しだけ長生きしました籠の虫 | 浪越靖政 |
(まとめ/ゆに編集委員 森平洋子)
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