手に掬い手からこぼして吉井川
時実新子
女性の情念をストレートに表現し、
「川柳界の与謝野晶子」とも称された
岡山出身の時実新子(1929-2007)。
3月10日は命日で没後17年を迎える。
今年の1月、吉井川河口の生家近くに
掲句の句碑が建立された。
地元の有志の方々によるもので
句碑には句が、新子の直筆短冊の書体で刻まれている。
時実新子は終戦後、17歳で結婚して姫路へ移り、
25歳で川柳と出会った。
たちまち川柳界で注目の存在となり
58歳のときに刊行の句集『有夫恋』は
異例のベストセラーに。
以後、川柳作家そしてエッセイストとして
生涯第一線でペンをふるい続けた。
句碑がのぞむ吉井川河口は、
まさに海も空も広々と一体となる新子の原風景。
本作は新子が52歳のときに発表した
「吉井川再会四十五句」の中の一句で、
故郷に変わらずゆったりと流れ続ける吉井川に手をふれながらの
そこはかとなき無常観が伝わってくる。
時実新子の詳細については
公式サイト「時実新子の川柳大学」でもどうぞ。
(『時実新子全句集 1955-1998』 大功社 1999)
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