今日の一句 #637

命より大事な前髪にサクラ
真島 芽


ああ、いいなあ、と微笑してのち、遠い目になる。
その目をうーんと細めてみれば
確かに私にも、前髪が命より大事な頃がありました。。


前髪が命より大事、なのは
いわゆる思春期の限られた時間。
その後、就職や進学をすれば
メークやファッションで
いくらでもお洒落ができる、できてしまう。


今、許される精いっぱいのお洒落で自己表現。
そんな前髪のつやつやに
さらりと、はっと、サクラを取り合わせた本作。

桜を「サクラ」とカタカナ表記にし、
句のおしまいに置いたことで
軽やかにして余韻深い作品になっている。


クラス替えや卒業など、さまざまな別れの中に、
もしかして憧れの先輩もいただろうか。

春の繊細な揺らぎが印象的な本作の作者は
まさに高校2年生。

 スカートを折ると十七歳になる
 美術部の端くれとしてバンクシー


出典は先月発行された
川柳誌「川柳の話」第4号で、

真島芽氏も、姉・凉氏とともに本誌の会員。

 やりきった顔は泥人形のほう   真島久美子
 大吟醸底を覗けば二重丸     うつわ
 氷砂糖いよいよ境界と揺れて   福士かれん
 靴紐は保護色にする出勤日    真島 凉
 蝶という空をなぞればゆうらしあ 月波与生


発行人は月波与生氏、編集人は真島久美子氏で、

この4号より会員制に移行とのこと。
会員による川柳以外にも、
エッセイや鑑賞、書評の寄稿など
多彩なメニューで構成され、年2回発行。
お問い合わせはこちらまで。
tukinamiyojyo@gmail.com  (月波与生)


(「川柳の話」第4号 満天の星社 2024.2)

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