笑ってる写真が少なくてわらう
月波与生
みんながピースして
はいチーズ!で笑っている中で
一人、しぶしぶの素(す)で写っている。
そういや幼い頃からずっとこんな感じだったな、
とアルバムを繰りながら、わらっている。
下五の「わらう」は平仮名表記ゆえ
笑う、嗤う、微笑、苦笑など
読み手の中でも複雑にニュアンスを変える。
写真は苦手で、人に合わせるのも不得手。
そんなキャラクターを
自嘲しているようで、ひそかな自負も伺える。
気になるのは、数少ない「笑っている写真」の方。
それはいつの。誰との。
はたまた誰にカメラを向けられて、
こんなに不用意にいい表情をみせているんだろう。
掲句は、先月発行された月波与生氏の第一句集『ライムライト』より引く。
版元は氏自身の立ち上げたレーベル「満天の星」。
謝らぬ猿の乾電池を換える
星空を羽織れば父になる祭
鍵盤連打薬莢の音ばかり
戦争も平和も肉を焼く匂い
きみと見るライムライトのような月
時代の緊迫にさす詩性のひかり。
(月波与生川柳句集I『ライムライト』
満天の星 2024年)
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