元々「ユーモア」とは体液を意味するラテン語の「フモール」という言葉だった。中世の医学では、人間の健康は四つの体液(血液・粘液・胆汁・黒胆汁)から構成され、どれか一つの量が基準値を逸脱すると不調になるという体液学説の概念が重要視されていた。
次第にユーモアの示すものは、体液から人の体調へと変わり、ユーモアに変化を与えることで、人の気質が変わり、笑いにも繋がることから、人の心を和ませるような洒落を意味するようになる。
医学・生理学用語だった「フモール」を、美学的な用語の「ユーモア」として使い始めたのは、ルネッサンス時代の文芸批評家たちだった。
ユーモア=humorの語幹 hum は「土、大地」を意味する humus、そして、その土からつくられた人間 homo というラテン語につながる。
ユーモアは、人間にとって人間らしさにつながる本質的な要素なのかもしれない。ユーモアとはつらい現実と向き合う能力であり、気分が良い方向に転じると笑いも起こる。そこから人の気持ちを和ませる「おかしみ」を表す言葉になった。
青くなるユーモアだけを持ち歩く 吉松澄子