Vol. 222 弱い

「弱」という字は、古代中国で弓の勢いが弱い様子を表す文字として生まれた。初出は紀元前の甲骨文字にまでさかのぼり、その形は折れ曲がった弓を象った象形文字に由来する。

『説文解字 ( 中国最古の字書。紀元100年頃成立 ) 』によれば、「弱」は「橈(たわむ)」の意味を持ち、二つの弓に「彡」の飾りを添えて構成されている。

「彡」は毛飾りや模様を示し、ここでは呪飾を施した儀礼用の弓を意味する。こうした弓は実戦に用いるものではなく、弓勢も弱いため、「弱」という意味と結びついた。

これに対し「強」は、天蚕糸の弦を張った力強い弓を表したと考えられる。

したがって「弱」は、実際に装飾的で柔らかい弓を起源とし、そこから「力がない」「劣っている」という意味が派生した。

 乱気流 意思の弱さと薄い雲  鈴木 雀