今日の一句 #713

ひんやりと無口鋏という仕事
七尾美千子


とても優秀な鋏である。
手入れが行き届いていて切れ味鋭く、
黙々と仕事をまっとうする。
すなわち、切る。


そこに私情をはさむことは
許されていないし、その必要もない、
はずなのに、
「ひんやりと無口」には

言葉にはならない屈託がひんやりとにじみ、
ふと刃先を私に向けて
何かを語りかけてくる。


さて本作は、今からちょうど20年前に開催された
「時実新子の川柳大学」第12回全国大会の入選句です。
題は「鋏」で、選者は杉山昌善氏。
もう少しご紹介すると


 最初にチョキそして人生ずれたまま  丸山 進
 ずたずたのシャツと鋏が置いてある  鎗田郁夫
 髪切った鋏次の人に渡す       佐渡真紀子
 手の平で女の脚になるハサミ     竹井紫乙


毎年、月刊「川柳大学」の8月号は
全国大会全記録が掲載される特別号で、
厳選の秀句が満載。

今も、折にふれ開いては味わっています。

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