バンジーの伸びきるまでの風の音
宮井いずみ
あっ。
一読、からだが宙に投げ出された。
真っ逆さまのほんの一瞬が
スローモーションのように流れるなか、
私も風の音を聞く。
バンジー「の」、「伸」びきるまで「の」、風「の」音
「の」の間(ま)や響きが、
ロープの伸びていく時間を
詩的に間延びさせるように働き、
もしリアルにバンジーを体験したら
こんな感覚なのかしらん。
えいっと飛んだら、こわさは消える、のか。
飛ぶことでしか出会えない風があるとしたら
勇気を出してみようかとも思う。
日常のバンジーにおいても。
本作は、新刊『理数系のティーポット』から引く。
ゆに会員でもある宮井いずみさんの待望の第二句集。
銀漢へ座礁くじらの50頭
どろんこの犬、夕立も旗である
指切りをしたら霙になっちゃって
モナリザのぷかりと浮かぶ洗面器
ユニークな具象や取り合わせに立ち止まり、
読み解きを楽しむ一方で、
お返しのお返し秋晴れのカノン
クスノキの空をパクッと丸かじり
の大らかさな明るさや
座りたいところはいつも濡れている
あほやなあと動く写真のかばの口
わけ聞かず姉が洗ってくれた靴
春隣りとても疲れていた母は
やや控え目なたたずまいの
こんな作品もじんと印象に残る。
多彩な魅力で、他の読者の推しの句にも興味津々になる本書。
ゆにの本棚でもご紹介しています。
臍の緒と何を入れようチェロケース
(句集『理数系のティーポット』 宮井いずみ 青磁社 2025年)
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