白鳥の眠りの底の底の白
大野風柳
眠りの底の底。
そこには、羽よりも雪よりも白い
一点の曇りなき世界が広がり、
白鳥を、さらに自由に羽ばたかせているよう。
一句は白にはじまり白で結ばれ、
再び白へ戻っていく。
眠りと目覚め、夢と現実の無限ループへ
やわらかにとりこまれ
不思議な浮遊感覚を楽しみつつも
その白にうっすらとにじむ
白ゆえの哀しみのようなものにも感じ入る。
作者の大野風柳氏が昨年11月6日に97歳で永眠された。
新潟を拠点に「川柳文化発展に尽くした生涯」として
川柳界の内外で惜しむ声が続く。
大野氏は1928(昭和3)年、新潟に生まれ、
弱冠20歳で柳都川柳会(後の柳都川柳社)を創立。
翌年には「柳都」を創刊し、昨年1月に終刊するまで、
実に75年以上にもわたり生涯主幹を貫かれた。
全日本川柳協会の前理事長で川柳書の著作も多数。
長きにわたりメディアの川柳欄の選者も務められ、
作家として、指導者としての多大な功績は
ここに記すまでもないけれど、
個人的な、思いがけないご縁についても
少し触れておきたい。
ちょうど10年前、神戸文学館でこんな展示が開催された。
『昭和の川柳百人一句展 ー見つかった幻の句集からー』
(2016年1月29日~3月13日)
幻の句集とは、大野氏が1981年に手掛けられた
当時の気鋭の川柳作家100名の色紙によるアンソロジーという
大変ユニークなもの。
『現代川柳百人一句集』と銘打たれ限定500部のうちの1部が
時を経て人を経て、たまさか私の手元に届き、
神戸文学館で展示されるまでにいたったのは
今にしてなお感慨深い。
その取材と準備のために、
新潟へ出向いて初めてお目にかかった大野氏は、
評判どおりの気さくてあたたかいお人柄で
示唆に富むお話をたくさんお聞かせくださった。
そんなお人柄と風土に根差した作品を
改めて味わっている。
押し花に小さな風がやってくる
蟹の目にふたつの冬の海がある
蛍も雪もみんな五七五でした
(『定本大野風柳句集』大野風柳/柳都川柳社 1998)
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