途方に暮れて 去年新色のルージュ 笹田かなえ
モノトーンの句に、ルージュの部分だけ色がついている。
つやつやときれい。
ただし去年の新色。
というあたり、その発色が読みようで複雑に変化するのがおもしろい。
ルージュは、もしかしたら、去年買ったままになっていたのかも。
長らくつける気になれなかった、その1本をつと手にして。
すっと引いてみて。
ぱっと顔もとが明るくなって。
そんなささやかな行為から
自分の世界に色を取り戻せることもある。
本作は作者・笹田かなえさんが発行人を務める
「川柳カモミール」最新号からの1句。
亡き母の日記のロシア兵の銃 夢路
三日目のカレーの芋を探してる 潤子
ブラウスから透けているシルル紀の海 守田啓子
四囲無人無月の夜は鋭角に 細川 静
抜けた歯を探す生家の屋根の上 滋野さち
今号も、会員作品をはじめ、多彩なゲスト企画で
読みごたえたっぷり。
くわしくは、笹田かなえさんのブログ
「川柳日記一の糸」よりどうぞ。
(「川柳カモミール」第5号/カモミール句会 2021年8月)
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