今日の一句 #507

途方に暮れて 去年新色のルージュ  笹田かなえ

モノトーンの句に、ルージュの部分だけ色がついている。
つやつやときれい。
ただし去年の新色。
というあたり
その発色が読みようで複雑に変化するのがおもしろい。

ルージュは、もしかしたら、去年買ったままになっていたのかも。
長らくつける気になれなかった、その1本をつと手にして。
すっと引いてみて。

ぱっと顔もとが明るくなって。
そんなささやかな行為から
自分の世界に色を取り戻せることもある。


本作は作者・笹田かなえさんが発行人を務める
「川柳カモミール」最新号からの1句。


 亡き母の日記のロシア兵の銃     夢路
 三日目のカレーの芋を探してる    潤子
 ブラウスから透けているシルル紀の海 守田啓子
 四囲無人無月の夜は鋭角に      細川 静
 抜けた歯を探す生家の屋根の上    滋野さち

今号も、会員作品をはじめ、多彩なゲスト企画で
読みごたえたっぷり。

くわしくは、笹田かなえさんのブログ
「川柳日記一の糸」よりどうぞ。



(「川柳カモミール」第5号/カモミール句会  2021年8月)







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