大声が入る私の洗面器 弘津秋の子
「○▲□××☆▼××!!!」
なんて、ここではちょっと文字起こしできないような叫びも
まるごと受けとめている洗面器。
どんな愚痴も本音も鬱屈も大丈夫。
ぜったい溢れだすことはない。
けれど、レスポンスもない。
でもそれでもいいのだ。
声を吐き切ったら、
冷たい水でじゃぶじゃぶ顔を洗う。
そして鏡の自分にムンとうなずく。
と、誰しもに覚えのある日常のちょっとした行為が
コミカルに作品化されている。
「大声」の振りかぶりが可笑しい。
本作は弘津秋の子さんの第一句集『アリア』より引く。
以下も『アリア』より。
正しい人が大きな犬と歩いている
ありがとうごめんね美しい夕日
捜しに行こう森の熊さん歯医者さん
玉葱の輪切りきれいな声がする
(句集『アリア』 弘津秋の子/あざみエージェント 2008)
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