惚れてまうやろ泣き虫な福笑い
惚れてまうやろぎこちない白足袋
お正月のせいや惚れてしもたやん
妙
白鳥の眠り くずれる角砂糖
こんとんを包む一枚のハンカチ
キッチンの疲れた海は叙情詩に
西田雅子
切り札の誰も切らずに福寿草
重箱は右で玉手箱は左
初雪に触れ下読みの二倍速
芳賀博子
山茶花に手招きされて行き止まり
甘酒と心の揺らぎ飲み干して
ツボ押し棒買って女は自立する
林 操
世の中は結果オーライけせらせら
システムはあれどれそれでこれが来る
マスクない同士が交わすハイタッチ
飛伝応
ウィンウィンという合理的対処法
きついなあ過去になってはくれぬ過去
もう二度と会うこともない人と今
平尾正人
発声練習三年ぶりに開く喉
あかんあかんだけれど好きよ歌が好き
レクイエム近づいてくる天の門
弘津秋の子
元気でねひっつき虫を背に飛ばす
人肌を詰めてふるさと宅急便
やっちゃうの戻るの生乾きのネイル
藤田めぐみ
よちよちの母と眺める吊るし柿
すりこ木でご飯をつぶす歯歯歯歯歯
I hope まだ人間であることを
藤山竜骨
妻と次女家(うち)には神がふたりいる
妻入院代わりに居着く閑古鳥
眼鏡何処?おでこに鎮座哀しそう
堀本のりひろ
ぴんころりサムギョプサルの作り方
be動詞 根性論が降ってくる
励ましてくれたらわかる痛いとこ
宮井いずみ
冬の蝶うしろめたさがつきまとう
頬杖はもう似合わない冬の窓
冬銀河がんじがらめを解きほぐす
もとこ
あのときは鮮やかにある今もある
行ってきます拍手鳴りやまない落ち葉
格別はイチョウを通過する光
本海万里絵
裸木の切り絵にあそぶ雀の子
月の弦たぐり寄せてる調律師
ゼロコーラZ世代の落としどころ
森平洋子
一月の囀り神話の国に住む
踏み外すまで磨く月の階段
混沌のほとりで水母飼っている
山崎夫美子
ばあちゃんはバニーガールをしとってん
夜の街ウサギはそっと舌を出す
ブラボーと言った男が沈んでる
吉田利秋
風神と美人逆らわないでおこう
渡り鳥呼び寄せましょうコロラトゥーラ
言い訳はすまい湯船の膝がしら
四ツ屋いずみ
駆けだしたココロ坂道急カーブ
木枯らしに愛の行方を問うなかれ
ゴールから見える景色を生きている
吾亦紅
あらたまのエマージェンシークッキー数えいる
もう時効こうさぎの耳あたたかし
加速して転んで霧散ピクトさん
阿川マサコ
冬に入るかぼちゃゴロンと転がせて
十二月森の深さが見えてくる
流星のなんとあっけない夢よ
浅井ゆず
冬聖樹下ズンバとキスとスコールと
傘捨てよう師走のスコールやってくる
ワールドカップ冷や奴が似つかわしい
朝倉晴美
パソコンの進歩が僕の退化です
初雪が足跡をみて微笑んだ
一億円くらいは誤差の範囲かな
伊藤良彦
絞ってしぼって通行人を出すタオル
てのひらの泡が消えない12月
架空のボールと尽きるまであそぶ
岩田多佳子
眉アートすこし強気の折り返し
団塊世代おでんの具にもこだわりが
この星の戦収めよ冬将軍
海野エリー
冬銀河泣きたいピアス夜に投げ
こたつにはあの子が眠る羽降ろし
プレゼント冬の銀河をありったけ
おおさわほてる
気がつけばジュラ紀で逢った太郎冠者
子午線を越えて夜空のシャンデリア
傷あとを横切る列はしゃれこうべ
落合魯忠
電飾の途切れて非加盟店あり
寝たふりで聞いてる叱る人の声
まだ冬に馴染んでいない首の位置
小原由佳
ファンファーレ喪明けの海を裏返す
スキャットで超えてきました冬銀河
切り株にぽつんと父の冬帽子
笠嶋恵美子
マッチ売りサンタの髭に火を点ける
ちょっかいを出してみかんの山崩れ
アポロチョコ成層圏を突き抜ける
川田由紀子
恍惚の牡蠣に衣をまとわせる
ためらいの角度で千本釈迦堂へ
新月に白鯨からのツートントン
河村啓子
クーピーの薄さで描いた私小説
不意に落ち羽根 木漏れ日は戻らない
雪うさぎ抱きしめられた日もあって
菊池 京
晴れ女なんですよって薬局で
名は船子この世で逢えずいた叔母は
エゴサーチしたら未来が待っていた
北川清子
よく晴れて水菜白菜買う気分
消しゴムハンコの兎が跳ねてお正月
晴れ晴れと雑煮の餅を追加する
黒川佳津子
長靴の4番手洗いマラーホフ
ふでねむるアルゴリズムによがたれる
命侖余食傘念会佱今介舎(ヒキアゲシャジュウタクアトノソウギジョウ)
河野潤々
夢のなかポインセチアのポイでいて
篝火草モノクロ―ムな山陰で
アディショナルタイムとことここんなとこ
斉尾くにこ
桃缶を新薬として推してみた
白い恋人は妖精の異母姉妹
病的に逢いたい夜の鳥まみれ
澤野優美子
悪くなる病と知っている木の葉
傘を差す 要らん袋を一つ下げ
舞い降りてくるきらめきが手に刺さる
重森恒雄
メダカ飼う以来苦手な活き造り
啄木にそっくりな蟹 練り歩き
ホテルは「シーサイド」ネオン消えたまま
杉山昌善
(広辞苑より)秘密結社の作り方
コード譜の裏側にまた通り雨
左手の血液型をまた変える
須藤しんのすけ