酔うたびに街を消してもいられない
小池正博
沁みる。
アルコール度数高めの一句が、歳晩にじんと。
「街を消す」が、さまざまな読みを誘う。
それが因果なら
闇堕ちしたヒーローのつぶやきのよう。
一方で、記憶の中の街かとも思った。
酔うたびによみがえる、あの街のあの頃を、
さらに酒で消そうとしている。
いつまでもこんなことでは、と吐息つきながら。
句は味わうほどにほろ苦くも
うっすらと夜明けの近づいている気配もあって。
出典は、小池正博さんの新刊『海亀のテント』。
「川柳スパイラル」編集発行人、
アンソロジー『はじめまして現代川柳』編者である氏の第三句集。
人体は樹に樹は人体に憧れる
コンビニの中で滅んでゆくふたり
どうしても緑に染まる鳩と蛇
妹とはぐれぬように街あるき
蜘蛛降りて少女の肩に網を張る
次々に立ち現れる景に
ひるみ、すくみ、
ざわざわと惹き込まれながら
一気に読了。
突き抜けた先の風を大きく吸い込むや
再び入口に立ち戻りたくなっている。
(句集『海亀のテント』 小池正博/ 書肆侃侃房 2022)
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