子育てを終えた友から来る手紙
原井典子
かつての仲良しからの久しぶりの手紙。
子育てもひと区切りついて、
やっと自分の時間もできたし、
なにか新しい趣味でも始めようかしら、
ちょっと旅行もしたいわ、みたいな。
そんな、ごく平凡な幸せをしたためる友を
ふっと遠い、と感じているような一句。
手書きの文字は変わりなく、懐かしくも
それぞれの道を歩み始めてから、
もう随分時が経っているのだ。
出典は、原井典子川柳集『捜索隊Ⅱ』。
ことばの余白にさまざまなスパイスが効いている。
おみくじを小さな声で全部読む
私は不在スイカの白い種
風呂の湯を抜いて親孝行をする
捨てて来た猫がなかなか戻らない
隠れ家の町内会費払い込む
(句集『捜索隊Ⅱ』 原井典子/葉文館出版 2000)
過去ログはこちらから▶