電線にいっぽん混じる龍のひげ
なかはられいこ
ほら、と句が指さす方向を見上げてみると、
あら、ほんと。
ちょっとナマっぽい揺蕩い方をしている
いっぽんの線をたどってみると、
そこには龍の姿あり。
ひげに止まっておしゃべり中の雀たちは
まだ気付いていないみたいだけど。
ところで龍といえば、
春分の頃に天に登り雲を起こし雨を降らせる、
という中国の伝説から、
俳句では「龍天に昇る」という春の季語がある。
もっとも本作の龍は、
体躯もながながと空に揺蕩い、
春眠をむさぼっているふう。
なんて、私の景は勝手にふくらむばかり。
でもきっと龍は私のごく日常の空にも泳いでいて、
けれど、ふだんは見えない姿を
ことばが見せてくれた。
今日の一句、出典は今年2月に発行された
「川柳ねじまき」最新号。
特集として、発行人でもある、なかはられいこさんの
句集『くちびるにウエハース』の
批評会のもようもたっぷり収録されています。
仮に地球だったらと青蜜柑剥く 青砥和子
小吉が跳ねるフルーツバスケット 岡谷 樹
夕暮にくっついている柿の種 妹尾 凛
菜の花の海に溺れてからひとり 丸山 進
膝ついて見るまだ咲いていない白 八上桐子
椋鳥と常連客を避けて秋 二村典子
(「川柳ねじまき #9」 ねじまき句会 2023年2月)
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