サルトルを読み 空蝉を樹に戻す
墨 作二郎
サルトルを読み、で一字空け。
その小さく無限の時空間で
主人公はどんな思考を巡らせたんだろう。
「存在と無」を体現するような空蝉は
ふたたび樹にとまり
読み手へも黙して語りかけてくる。
出典は『動詞別 川柳秀句集「かもしか」篇』。
1999年、かもしか川柳社より発行された本書は
ある先輩から譲り受けて以来、
お気に入りのアンソロジーのひとつ。
多彩な秀句が収録されているだけでなく、
ページを繰りながら、敬愛する作家諸氏に、
「あ、こんなところで」と出遭えるのも楽しい。
本作は、動詞「戻す」の項で紹介されている。
作者の墨作二郎さん(1926-2016)には
主宰される勉強会や吟行に何度か参加させていただき
川柳、さらには創作の本質にかかわることを
いろいろとご教示いただいた。
掲句にふと氏のたたずまいが重なる。
(『動詞別 川柳秀句集「かもしか篇」』
矢本大雪編 1999年 かもしか川柳社)
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