Vol. 146 祈り

 「祈る」という言葉は、もともと古代中国の「祭る」という行為から来ている。祭りや儀式の中での願い事を意味していた言葉が、日本に伝わる過程で「祈る」という形に変化した。

 「祈」の字は、「神にいけにえをささげる台」の象形と「曲がった柄の先に刃をつけた斧」の象形から成っている。

「祈りーいのり」の語源にはいくつかの説がある。

・「いのり」は「生宣(いの)り」。「い(生)」は生きる、「のり(宣)」は宣言を意味する。なので「いのり」は生きることの宣言。

・「いのる」の「い」は接頭語で、「のる」は古語の宣る(のる)という説。口に出して、言葉の形で神仏に幸いを願うことを「宣る」という。

・「斎み(いみ)+宣る(のる)」の転訛した形ではないかとする考え方も。「斎み」は災厄を防ぎ、健康を守るために魂が外に出ないよう身を清め、慎むことで、忌日の「忌み」に通じる。

・「いのる」の語源は、「意(い)+宣(の)る」。つまり、「自分の意志や意図を宣言する」こと。

 日本人の祈りは、見えないものへの畏敬の念として、宗教の中の祈りだけでなく、自然や日常の中にあり続けている。

  祈りより遥かなものを未だ知らず  岩崎眞里子