今日の一句 #660

ノートからバイクの音がする深夜
真島  凉

ノートをひらくと
もうひとつの世界がたちあがる。


遠くからバイクの音。
次第にこちらへ近づいてくる。
もしや、白馬の王子ならぬバイクの王子が
かっさらいに来てくれている?


と、句の世界に浸っていると
かなりうっすらとした記憶ながら
かつて私も、ノートから同じような音を
耳にしたことがあるのを思いだした。


現実の社会には「モスキート音」、
すなわち若者だけに聴こえる17000hz前後の高周波音があり、
それは加齢とともに次第に聴こえなくなるという。


もしかしたら想像や妄想の世界にも、

モスキート音がある?
・・なんて、なんだか
夢があるようなないような話になってしまったけれど
ここは確かめてみるしかない。
さっそく今夜にも、

家族が寝静まったらノートを開いてみよう。
そして両耳を研ぎ澄まして。


(「川柳番傘」2024年8月号  番傘川柳本社)

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