ノートからバイクの音がする深夜
真島 凉
ノートをひらくと
もうひとつの世界がたちあがる。
遠くからバイクの音。
次第にこちらへ近づいてくる。
もしや、白馬の王子ならぬバイクの王子が
かっさらいに来てくれている?
と、句の世界に浸っていると
かなりうっすらとした記憶ながら
かつて私も、ノートから同じような音を
耳にしたことがあるのを思いだした。
現実の社会には「モスキート音」、
すなわち若者だけに聴こえる17000hz前後の高周波音があり、
それは加齢とともに次第に聴こえなくなるという。
もしかしたら想像や妄想の世界にも、
モスキート音がある?
・・なんて、なんだか
夢があるようなないような話になってしまったけれど
ここは確かめてみるしかない。
さっそく今夜にも、
家族が寝静まったらノートを開いてみよう。
そして両耳を研ぎ澄まして。
(「川柳番傘」2024年8月号 番傘川柳本社)
過去ログはこちらから▶