気をぬくと夜空になってしまう髪
西田雅子
それはコワイ、オソロシイ。
しかし、夜空になってしまう髪って?
たとえばクセ毛ゆえ、気をぬくとすぐに夜空のように
とめどなくもやもや広がっていく、とか?
否。「のように」ではなく、
本当に夜空になってしまうのだ。
つまり、ちゃんと現実を生きていないと
夜に触れた黒髪が、
あれよあれよとそのまま夜空となり、
星を散りばめ、ブラックホールをもはらんでしまう。
からだは現世に残したままでね。
なんて、ああ、うっとり。
本作は、ゆに副代表・西田雅子の
新刊『そらいろの空』に収録の一句。
微睡んで猫もチーズも溶けてゆく
散骨は虹の遺言でしたから
桜満開誤植のひとつふたつみつ
雨脚をつかめば握りかえす雨
筆圧を変える スイートピーへ手紙
「五七五の向こうに広がるもう一つの世界を
行ったり来たりしている」
とは帯文にもなっている、あとがきの一節。
けれど、ときに、そうやすやすとは
戻ってこれないような、あやうさも私には魅力です。
お洒落で詩的、でも
ちょっとした光の当て加減で
読みがふっと変わり、深みへ惹きこまれてゆく。
そんな作品の数々が、
ゆったりと味わえる、待望の第二句集。
ぜひ、お手元でどうぞ。
装幀も素敵!
(句集『そらいろの空』 西田雅子
ふらんす堂 2025年)
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