Vol. 210 歌

「歌 (か) 」は「哥 (か) 」がもとの形。「可」は祈りを収めた祝詞を木の枝で殴ち、大きな声を出しながら祈ること。

祝詞で神様にお願いしても、なかなか簡単なことでは願い事を叶えてくれないので、木の枝で祝詞の入った器を殴(う)って、私の言うこと、願い事を聞いて!と叫ぶ。そうすれば、祈りも叶う(可能になる)かも、で「可」を二つ重ねて「哥」に。

もともと、歌というのは楽しんで歌っているのではなく、必死になって神へ向かって「こうしろ、こうしろ」といってお祈りしているときの声が歌。

のちに口を開けて歌っている人の形の欠(けん)をつけ加え、これがいまの歌という字になった。

また、日本語の「うた」は、「拍(う)つ、訴(うった)う」と関係があるようで、詠歌の「詠」は、声を長く引く歌いかた、「歌」は強くせまるような歌いかた、「唱(しょう)」はみんなで合唱する歌いかたである。

 雨粒の輪郭に棲む歌を聴く 藤田めぐみ