2026年6月

もぎたての星あげるから笑って
持ち主不明の朝は冷凍保存
お役目は終わりましたと夕焼け

西山奈津実

逡巡は流線形になり雨季へ
天窓といつまで愛しあう守宮
おそらくは紙魚の突然変異かと

芳賀博子

朝寝坊今日は私の誕生日
猫舌を待ってくれない月曜日
許そうかザクザク刻む春キャベツ

林 操

引っ越しのどこかでハエ叩きが消える
キャラ弁のウインク放課後の眩暈
見逃し三振に受信料のお手続き

飛伝応

角砂糖挟んで敵が目の前に
職質の不快な「ちょっといいですか」
健康に一番悪いのは薬   

平尾正人

顔見知り見つめあうだけ鴉くん
ワッと増えアッと解散鳥一家
入院と退院春の川下り

弘津秋の子 

噴水が上がる過去から過去を辿るとき
嘴の色付けをして但し書き
軍艦は既読スルーを許さない

藤山竜骨 

逃げるなよ俺の話も聞いてくれ
ねじりはちまき見かけ倒しのお父さん
幼き頃B29が空駆けた

堀本のりひろ

ウルトラの花は突然変異する
憎まれて嫌われてまだ燃え残る
進もうとすると絡まる糸電話

峯島 妙 

ひざに念仏みぞおちを青しぐれ
朱鷺色の本音をさらすダムの底
繰り返す話あさがお蔓のびる

宮井いずみ

ねぇあの日さわたしたちすごく笑ったね
朝起きて君に会う日だって思う
やってくれたねこんなに飛び跳ねたくなる

本海万里絵

ポプラ萌ゆ白琉金は逃走中
強がりと声音はアマリリスに似て
離弁花の剥がれる音の果てしなき

森平洋子

ささやかに生き菖蒲湯と柏餅
川風に百匹泳ぐ鯉のぼり
束の間の家族結集GW

森 廣子

語尾だけを残し春暮の僧ふたり
カフェの扉に占い師募集中 
夕ぐれの習性人は前屈み

山崎夫美子

丁寧な鑑別所まで銀は好き
くちびるは国境越え青き蝿
笑われる側の〰️線それでいい

山本絲人

遺品整理すべて捨てろと言う遺影
おばさんの大きな写真持ち帰る
おじさんの軍人だった写真見る

吉田利秋

「そういう問題じゃない」と語る森
電磁波問題の墓前には野菊
アナログなぬくもり昼のミニシアター

四ツ屋いずみ

限られた命とわかり暇つぶし
瞼にはあなたの分も瞳持つ
昼飲みの焼酎のアテひなあられ

渡辺かおる

許されてものみな芽吹く悲の器
ゆるゆると保温 わたしという宇宙
澄みあがる力 おはようにおはよう

吾亦紅

切り刻みたいひと日もあって針生姜
菜箸で払う鬱気のようなもの
山蕗山椒茗荷楤の芽 やがて夏

浅井ゆず

蔓薔薇は好きに勝手にだから好き
輝くをライトと読んでいる児童
探しネコ薔薇お屋敷に潜んでた

朝倉晴美

六月はこども更えかと聞くこども
ぐっしょりと紫陽花門に辿り着く
五月闇 緑の指を食べちゃった

石野りこ

行き先を決めない旅の目的地
地下鉄は魑魅魍魎の自由席
甘やかし過ぎた私の脳の皺

伊藤良彦

桜鯛海峡越えて潮になる
藤棚の娘は娘超えてゆく
夏障子開ければ龍に睨まれる

稲葉良岩

踊り子と波動のちかい花ばたけ
やましいことはない太陽と歩く
たて糸よこ糸ゆるゆる許す情

岩田多佳子

仲直り月が味方になった夜
満潮に戻されてきた玉手箱
あきらめのピリオド丸く転がって

海野エリー

銀シャリに着弾したいあなご天
青もみじ夏の裏地が透けてくる
京番茶の火加減で炒る和平案

大竹明日香

たこ焼きの舟に収まる夜である
やんわりと送別会で撃たれたの
春の踏ん張り白いお皿をもらうまで

小原由佳

棒読みの弔辞へハンカチを絞る
煽てればぐんぐん伸びる豆の蔓
騙し絵の中で眠っている子猫

笠嶋恵美子

熟成させる否定形の数々
もうひとつの顔を念入りに洗う
期待値を押し上げ初夏をゆく踵

桂 晶月

渡し舟ドン・キホーテに流れ着く
ドクターも患者もアロハシャツを着て
最後にはおぼろ昆布を出してくる

川田由紀子

隣にすわっててよとゲームしながらきみが言う
習いごと待ってるうちにうたたねひとつ
行ってきますもう振りかえらないなフンワリフワリ

寒雷

脱の字がローカル線に乗りたがる
一筆箋一枚という証言台
卒アルのささやき白黒のポテチ

菊池 京

六月の白い花々敷くベッド
嘆く時流れていくよ薄墨は
貴方居なくなったら私透明に

北川清子

任せておけと父の背中は鯨の背
UFOから届く乗船許可証
悩みごと小さく見えたくじら雲

黒川佳津子

後ろ手に閉めたつもりの五月闇
臓物とエディブルフラワー喉を過ぎ
鳥の籠鳥の傾いで雫する

黒田弥生

遊星より愛をこめてみせますか
にんぐるのアリアへつらうゆーらしあ
へそくり束ねてカーネーション枯れて

河野潤々

ソーダー水妖精たちのトキワ壮
百光年先の生命線もらう
息吐いて新色の靴下はいて

斉尾くにこ

戯れに誘えば初夏の黒揚羽  
約束を右耳たぶに思い出す  
時刻よりやや早く淡い戯言  

重森恒雄

AIとふたりで捲る紙芝居
意味がないものなどなくておへそです
いつの間に事務用品となる右手

下野みかも

わたくしをうまくつつんだ包装紙
ニンゲンだから やさしさの変化球
未来までたぶんこんがらがっている

芝岡かんえもん

同僚の土産を選ぶ蚤の市
ストローの袋が風に怯えてる
柴犬に打ち明けている花屋前

島貫麻衣子

花ふたつ ほろりほろほろ酔うている
嫁ぐ娘(こ)の正座の前で溶ける父
俺の手話 指が話しを逸れてゆく

杉山昌善

初夏の木々という木々いきてていい
しろくしろくきおく塗り込め白夜かな
降りしきる雨にしきりに手を叩く

たかすかまさゆき

月の裏側はただいま化粧中
置き去りにされた昨日の影法師
散骨は竜宮城へまっしぐら

浪越靖政

崩れぬようただいま梅雨を組み立て中
ちぎっては投げちぎっては投げて ゆめ
リバティー柄の鳥を逃がす鎧戸

西田雅子

会員作品を読む 2026年6月 西田雅子

会員作品第59回をお届けします。

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