森を出たけものは爪を切っている
松田俊彦
爪はけものである証。
すなわちアイデンティティー。
けれど、森を出ると決めたからには、
切らなければならず、
切り続けなければならない。
誰も、何も傷つけることのないように。
何より、新しい自分になるために。
森を出た理由は書かれていない。
やむにやまれぬ事情か、未知への衝動か。
爪を切るたび、森は遠ざかる。
平明な句ゆえに、
味わうときどきの自身の心情が投影される。
希望とか喪失感とか、それから。
そしてふと、わが深爪を眺めて、
あの頃を思い返している。
(松田俊彦 遺句集 私家版
発行 with えんの会 2013年)
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