元気かぃにゅるっと笑う水たまり
新しい世界はいつも向かい風
青りんご風の匂いに身構える
吾亦紅
垂線の足になるまでパラサイト
疎か密かどこかが沼化よるの匙
かなかなかな平坦な視野抜けられず
阿川マサコ
万物への愛が足りずにグルーミー
枯アジサイ即身成仏とはかくに
輝いている百歳は肉食派
浅井ゆず
瀬戸内のかーさん僕はカミングアウト
気に食わないあいつアマゾン河満つ
パリの日本人私の好きな幼馴染み
朝倉晴美
雨風に打ちのめされているいつか
未来像描き直さねばピーターパン
太陽はいずこどん底の向日葵
海野エリー
嫁ぐ日に露草ぽんと咲きました
ひまわりは空のボタンだ一列だ
夕焼けがうちの窓だけ残ってた
おおさわほてる
噛むんじゃったら自分の脛をかじんしゃい
阿呆にもなれず馬鹿にもなれず秋になる
プライドは半透明のゴミ袋
岡谷 樹
原点といえばあの日の卵焼き
何もかも背負って地図は真っ赤っ赤
リズム感なくした雨が打つわたし
小原由佳
キャタピラの跡が残っている背骨
遮断器をうっかり越えて母になる
馬の背を越えて霞になりました
笠嶋恵美子
新月やボトルシップが出航す
逃げ道にタルタルソース添えてある
ちらと見る川上さんも転けている
川田由紀子
なんでゴーヤの機嫌とらんとあかんのよ
小数点以下切り捨ての蕃茄達
一領の衣や青色朝顔
河村啓子
金銀の折り紙兄ちゃんはズルい
残暑なき里で葉脈透けそびれ
小石置く一筆箋の四行目
菊池 京
蚊柱のような迷いとゆく晩夏
浴衣の金魚があなたに逢いたがる
選択を迫られている立葵
黒川佳津子
訓令式ですか私は風です
感染リスクだったイントネーション
ジュテームは罰ゲームかガムテープか
河野潤々
シャワーから噴水となる蝉しぐれ
欲望の迷路へ湧き立つ雲霧林
住めぬけど行きたい街に住んでいる
斉尾くにこ
はつなつの寝物語に負けている
お空がゆるむ助手席のくちびるに
恋慕とやハーゲンダッツ濃苺
澤野優美子
殺すのはあまり得意でない笑顔
痩せるのは海馬だけでもなくて春
暗殺現場にいた鯉の胃の中
重森恒雄
静脈のざわめく男みーつけた
どうしても喉を通らぬ異邦人
ゴシック体の男になっている真夏
芝岡かんえもん
雨乞いをするかのように君を乞う
負け犬の尾にも優しい芒梅雨
雨の日のお迎えなんて絵空事
昌善
海の日に海の向こうの歎異抄
目詰まりに右往左往の油照
線香花火恐縮ですとお辞儀する
妙
衣擦れの色とりどりの卵子達
おひとり様ですか?虹に通される
乱れる 船でも漕ぎに行こうか
千春
空き瓶に投げ入れられている晩夏
午後からは水平線になるつもり
推敲の途中で秋に呼び出され
西田雅子
遁走のフォーム正しく秋の風
LINE通話7分5秒虫時雨
アニソンのサビとめどなき流れ星
芳賀博子
バランスボールに乗って町まで買い出しに
あれも売り切れこれも売り切れ黄昏る
それでもとせっせせっせとノックする
林 操
メダルの色は問わず汗色涙色
歩きスマホ誰も五輪を見ておらず
お天気のなぜを訊かれている地球
飛伝応
平成のシャフトが折れたまま令和
宣戦布告したか乾電池が並ぶ
例として平方根を持ち出して
平尾正人
よく笑う母は語らず原爆忌
雨上がりクマゼミくんと虹を見る
八月の隠密ですか黒マスク
弘津秋の子
道中で磨く急所をはずす芸
甘やかす甘えるジャズはあいみての
井戸あふれこんなに淋しかったのか
藤田めぐみ
3人のピエロが北を向いている
古希だってユーチューバーで再起する
真っ先にやって来たのは河内節
藤山竜骨
残夜とは金星みっつ浮かぶ空
こんな日は金箔入りのチョコボーロ
晩夏へララバイしゅわしゅわレモネード
宮井いずみ
あの夏と茜の雲をまといたい
わたあめがほどく小さいころのこと
幻の城みたいだよ昼の月
本海万里絵
ドラクエの序曲でいこう日照り道
帰省の規制に奇声で気勢あげ
ゼンマイを巻いて私を解き放つ
森平洋子
追われるように炎天の乳母車
すいか畑の番人として青い空
ひとしきり眠る樹海を抱いたまま
山崎夫美子
愛犬に噛まれ孫には無視される
スナックにひろちゃんがいた三宮
わたしには戒名なんかいりません
吉田利秋