普段、「味」といえば食べ物のおいしさを思い浮かべるが、もともとは、口に入れたものを感じとる、ごく素朴な感覚を表す文字だった。
この漢字は、「口」と「未」から成り立ってる。「未」は、若い枝が伸び始めた木の姿を表し、「まだはっきりしない」「かすかな」という意味を持つとされ、そこから、甘い、辛い、苦いといった、口の中でかすかに感じる「あじわう」という意味が生まれ、「味」という字になった。
古代中国では、「味」は食べ物や飲み物の風味を表す言葉だったが、時代が移り変わるにつれ、その意味は少しずつ広がり、料理だけでなく、香りや空気感、さらには物事の趣や奥行きまで、「味」という一文字で表されるようになる。
たとえば「意味」の「味」は、舌で感じる味覚ではなく、そこに込められた価値や中身、含意や趣を指している。「意」は心に浮かぶ思いや考え、「味」はその思いが持つ深みや価値。その二つが重なって、「意味」という言葉が生まれた。
何かを「あじわう」とは、ただ感じるだけではなく、その中にある豊かさや価値をゆっくり噛みしめることなのかもしれない。
月光で煮詰める味の薄い夜 みつ木もも花

