視神経に編みこまれてる雨の音
矢車草に街の動く日見張られる
こんとんがだんだん蝶になってゆく
西田雅子
お昼寝のおつりは星ひとつでしょ
のようなものとつながったからオーロラ
裏返すように夜は明けていかない
西山奈津実
妖怪の総意とあらば取り壊し
鳥籠へ少し祭のおすそ分け
月見草手紙はいつも書き下ろし
芳賀博子
ひまわりの双葉間引いて夏が来る
饒舌にうつらうつらと合歓の花
ひとつずつ無力化されて喜寿になり
林 操
トクリュウの底辺にいて捨てられる
駅前が化ける人出は変わらない
天下りさても屋上屋の果て
飛伝応
選ぶのは光を抜けていくルート
空白は要らない余白なら欲しい
寛容な振りをしている不寛容
平尾正人
六月の紅い夕焼け夏に入る
石の上動かぬ亀のど根性
外出不可五七五の散歩道
弘津秋の子
ハチマキをきつく締めると蟻になる
ご指名はドライフラワーからにする
やがて苔むして凡人でもいいか
藤山竜骨
入道雲雷たちが相撲取る
風神雷神入道雲に鎮座する
超苦手雷遠くで吠えだした
堀本のりひろ
日に灼けた空き教室の時間割
充電が切れた私のふくらはぎ
一円が密集してる小銭入れ
峯島 妙
ひらがなのジャングルジムは滑るから
返事してほしいのかしら砂時計
紫陽花に添えるいいほうの花ことば
宮井いずみ
最後尾から見守ってるよ
知りたいと言ってしまってから気づく
どうだっていいよつられて笑っちゃう
本海万里絵
カモメカモメ今日も明日も働かない
迷子のお知らせ螺旋ミュージアム
物乞いのムッシュ教会のオルガン
森平洋子
椅子一つ用意して待つ花火の夜
部屋中が百合の香りでむせ返る
やんわりとその気にされて共犯者
森 廣子
レッカーに曳かれ見知らぬ町の雷
楽団がひそやかに持つ無人島
柑橘系で洗った首と風の陣
山崎夫美子
お誘いのラインはギョギョギョ誤送信
ともだちがデイサービスでたんとでき
親切なスタッフさんと盛り上がる
吉田利秋
いささかの怒りとランチ共にする
苔玉に移住しないか誘われる
足並みすぐ揃う母方の家系
四ツ屋いずみ
百歳の前日まさかの転倒
病室で祝う百歳 母は居る
私見て大好きという母 泣ける
渡辺かおる
ユニークな人と出遇った波状紋
会ったことないけどずっとお友だち
予定より長居して見ている 現
吾亦紅
骨董になってる蔦に巻きつかれ
梅ジャムを炊いて終了梅仕事
雑用のオンパレードの梅雨晴れ間
浅井ゆず
薔薇園を夫と秘密と回遊す
有休の教師ばかりの人間ドック
トキメキは甥の恋バナ生ビール
朝倉晴美
目標とルールがあって後退り
並ばせる仕事がらみのキティちゃん
夜明けの珈琲紋白蝶は囀ずって
石野りこ
ルービックキューブが僕の出身地
網棚に虹の部品がありました
海苔弁の蓋に自由でいたい海苔
伊藤良彦
驟雨過ぎ恋う人の来る駅仰ぐ
濡れた顔ここまで来たと笑う水
半袖にすると弱音も露見する
稲葉良岩
本日はモクネジゆるく締めなおす
バックミラーもろもろと吐く鳥未満
閉会のあとの朧のレース編み
岩田多佳子
花氷ラストダンスは保留中
しまい込む夢片耳のピアスきらり
ゆるく巻くレタス明るく生きようと
海野エリー
部長印押してくれたの蛸でした
地球儀を覗いていたら蛸がいた
紫陽花に僕の思い出咲いている
おおさわほてる
湯豆腐の寝言を包む昆布だし
食パンの耳に事実を告げておく
骨みたいセロファン越しに見る雨は
大竹明日香
みずうみがあふれぬように封をする
にくしんを卵パックに追い詰める
鳩尾につづく押しボタン信号
小沢 史
駄々こねるようにごろんとビール瓶
今はもう煙草は吸っていない壁
湖と話せる人に付いていく
小原由佳
バスタブに薔薇を浮かべて殻を脱ぐ
揺れながら記憶の海を泳いでいる
企みがにおう無花果の葉裏
笠嶋恵美子
しがらみを解く最上級の呪文
白になる最終ターン入るため
寄り添ってくれる小さい方の破片
桂 晶月
熊出没どこでもドアに鍵掛ける
京都派も奈良派も空に吸い込まれ
強がりを言って祭にしてしまう
川田由紀子
渋柿の六十年後のスクワット
ピカソなの坊やだったのバミューダパンツ
さきかけかさきおわりなのあねのほほ
河村啓子
ねーギューしてあと何回聞けるかな
いつだって僕は待ってる晴れるといいね
風と雨音も光もまばたきする間の
寒雷
紙相撲引き分けのまま梅雨明ける
ラムネ玉なのです第二ボタンって
Fの鉛筆にこだわった夕焼け
菊池 京
汽笛の鳴って船子ここに居るの?
助けて母親わたくしはすぐに行くのだから
梟の鳴いて眠りに着く時間
北川清子
ひ~ひょ~とオカリナかなり生返事
君の言葉の遠心力と破壊力
言い訳の雑さつついてくるカラス
黒川佳津子
空色の切手をちぎる梅雨晴れ間
先導は紫陽花寺の薄明かり
星合の宵なら紙で切る指か
黒田弥生
ちつじょってむっつり余白の肌ざわり
GGの混沌ダイヤ改正す
本名はどうあれ明日ののどちんこ
河野潤々
ガラス瓶空気の化石掲げみる
場のカラー空気はゆるく自然色
スピンオフ靴は魚のかたちして
斉尾くにこ
それぞれのリンゴの内の芯の向き
夕焼けを見るための部屋のある家
二度と戻れぬ森に忘れたボール
重森恒雄
戒厳令にくちづけている反抗期
十二歳つま先だけの夏休み
まちがった海で星座を組み立てる
下野みかも
夜の尻尾はニンゲンをはみだしていく
優しさの変化球あやつるのよね彼
引き算で喉は渇いてばかりいる
芝岡かんえもん
こそばゆい話がしたい黒電話
色つきのそうめん足りず天の川
わたあめのしろ虹の輪に群がって
島貫麻衣子
忖度か隣の家に白羽の矢
空青し私は今がイヤイヤ期
夏冷えのふたりが捲るカレンダー
杉山昌善
夏草のいきいき。空き家、おやしきは
バー低くしなはれ跳ぶんなら、ホント
あとで、あとで。とどのつまりはスルーやて
田尾八女
今日の日をかたちにすれば心太
あじさいの時差に瞼は閉ざされて
虹彩に滲んだ虹がゆれる夜
たかすかまさゆき
語ろうかR指定の一代記
その話左の耳で聞いておく
寝落ちしたまま冬から夏へ来てしまう
浪越靖政

