2022年4月

重かったその一言で象動く
泡沫の夢幻や南無阿弥陀
冷えた目で居場所を探す迷い犬   

堀本のりひろ

川柳のスランプだとは烏滸がまし
山の樹の根元開いて春を知る
おめかしの写真たくさん叔父の愛

毬 じゅん子

ほろ苦いまたねを入れるチョコの箱
リベルタンゴ蝶になりたい唐辛子
暴力に満ちた世界をねこ化せよ

宮井いずみ

空を指揮してとりだすよあまい雲
雨だれがグッモーニンと呼びかける
か弱さをお求めですかさようなら

本海万里絵

金魚草ニモに会いたくて空の底
悔恨の果てなき荒野凍て緩む
フルボッコ上等やんとなずな咲く

森平洋子

茫洋の宮址に座る点として 
一献は春のあなたに差し上げる
禅僧の視野にさざめく赤椿

山崎夫美子

ウクライナの子ども「死にたくない」と言う
プーチンと書いて侵略だと叫ぶ
福島の海に流すな汚染水

吉田利秋

もう期待していい頃ね コート脱ぐ
かわしきれないサバランからの投げキッス
ベドウィンの右から濃ゆい伝承の風

四ツ屋いずみ

傷ついて痛む 傷つかなくても痛む
その先を指差す影という陽射し
少しずつ明日の見える雪消草

吾亦紅

わらわらと痛点はるのいちめん
九字切って世界戦争博物館
空海と足をちゃぷちゃぷ春汀

阿川マサコ

猫の恋議論はヒートアップして
追憶にわっとかぶさるミモザの黄
梅桃桜の順がくずれて世は乱れ

浅井ゆず

頭痛の宵カエルの唄が聞こえるよ
吾よ友よ娘よ跳べ南十字星へ
チェルノブイリを知る世代ウクライナ愛

朝倉晴美

映画館の大縄跳びをとびにゆく
うっかりと昼を落として来たらしい
春の夜がぞろぞろときて輪唱す

岩田多佳子

いま君は何色の空見ているか
「ひまわり」の悲劇ふたたび地図を割く
メレンゲの切っ先たっぷりの未練

海野エリー

クロッカスぼくのくちびるひらかない
ろくろ首もどる身体に春の雨
春の雨誰も見えない僕の坂

おおさわほてる

値上げラッシュ梅の酸っぱさも二倍
いきなりの桜 突然の告白
雲よ雲よ行くな行くな銃を置け

岡谷 樹

手首にも婦人画報を持つ力
距離感を学ぶおでんと関東炊き
終焉に向けて切り取り線外す

小原由佳

ペパーミントな夜を奏でる手風琴
ヒヤシンス少しは乱れていいですか 
境界に向日葵の種まいている

笠嶋恵美子

チャキリスの指を鳴らして春が来る
棒グラフ隙間ぎっしりイヌフグリ
仮の世のあちらこちらに燕の巣

川田由紀子

人間を載せた車が人間を轢く
黄蝶が瓦礫に飛んで来て止まる
産声が濁音になるドニエプル川

河村啓子

毛筆にこだわり書けぬ果たし状
紙ねんど不器用なりの告白り方
サボテンの水やり喉仏うごく

菊池 京

春の浜ほぼ球体に近づいて
墨よそこんとこ押し量ってはくれまいか
ぬむぬむと夜しむしむと股関節

北川清子

平凡を貫く四月ぬるい水
春一番 前へ進めのホイッスル
今日も今日とて絶賛行進中

黒川佳津子

思春期を過ぎたなすびを好きになる
追い鰹自動下線を解除して
行間を断熱材で埋めなさい

河野潤々

まぶしくてあざとい肩のストラップ
美談めくほうへカラカラカランコエ
マシュマロへぼふっと顔をうずめる日

斉尾くにこ

みだらな白にするTOTOのトイレット
恋人にポン酢をかけて寝せておく
逢いにきてねアップルパイが焼けました

澤野優美子

捨てるにはいかにも惜しい穴の靴
何でもない椅子に腰かけてしまう
そのうちに呼ばれる方に歩きだす

重森恒雄

刺々しくて憎々しくて冬花火
ホーホケキョ許してあげる鉄条網
解き放て押し潰してる春すべて

芝岡かんえもん

絆です金魚のフンの繋がって
最後尾 背中切られることはない
神様にそろそろ返す五円玉

杉山昌善(昌善改め)

神様の時間誕生日は無色
翌朝の電車で帰るシンデレラ
恋なんかしなきゃよかったなんて嘘

須藤しんのすけ

軽トラの窓全開に春一番
春サラダマヨネーズ派かインスタ派
ぬるむ夜言葉の要らぬ木の芽和え

白鯨を鍋で煮てます。行きなさい。
洗濯をしないと月を干さないと
日常が指紋だらけで米炊ける

千春

推敲を重ねて春ができあがる 
春愁もシュークリームも同じ顔
菜の花で埋め尽くそうよ世界地図

西田雅子

ミスコピーきっかり百部春埃
考えるためのベンチやブランコや
花の雨眠り疲れという疲れ

芳賀博子

寒椿ひとりぼっちを知る涙
ちぎれ雲きみも迷っているんだね
危うさは熱処理すれば大丈夫

林 操

ゴミ屋敷落としどころも捨ててゆく
ゴミ屋敷おや半開きの金庫
ゴミ屋敷が声かけてきて困る

飛伝応

開いたり閉じたり忙しい両手
左足が伸びると伸びる右足も
墓石を磨いて防ぐ認知症

平尾正人

眠れない地球 戦争許すまじ
猫じゃらし雲つかむまで諦めぬ
閉院のお知らせドクターの腰袋

弘津秋の子

バイ貝がうまく取れないのも人生
名刺としての佇み方を模索する
残念なお知らせです 念写は未達

藤田めぐみ

菜の花を銃撃戦に巻き込むな
登校の小学生の列につく
税務署の還付申告黄砂降る

藤山竜骨

総 評 2022年4月 西田雅子

会員作品第9回をお届けします。

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