リビングの砂は昨夜の独り言 浅井ゆず
キッチンではなくリビング。
というのが、さりげなく独りを際立たせている。
ソファまわりや部屋の隅・・
朝の光が浮かびあがらせる白いざらつきは
昨夜つまんだお菓子の粉とか、
微細な埃のようにもみえて、
それは、無意識につぶやいていた独り言なのだ。
砂は目を凝らすほどに、
さらさら、さらさらと増殖する。
とめどなくさらさら、ゾクゾクと、
まるで安部公房の「砂の女」の世界。
と不意に、ガーッ。
砂とともに、わが妄想も、
一気に掃除機に吸い取られた。
(『川柳 宙 アンソロジー』川柳 宙/あざみエージェント 2019)
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