線香の端をつかんでいる煙
德永政二
今年の春の彼岸の入りは17日。
お線香をあげると、ふと思い出す一句がある。
線香の煙といえば、
いつぞやのチコちゃんでも
「線香の煙は故人のごはん」と紹介されていたけれど、
仏教ではこれを「香食(こうじき)」と呼ぶそう。
線香の煙は立ち昇り、手を合わせて偲ぶ気持ちを
あちらへと運んでくれるという。
掲句の煙もまた、その役目を果たしながら、
どこか人の気配を残していて、
ほのかな可笑しさと切なさを滲ませている。
ちょっと現世を去りがたそうな、
いや、端をつかみ、
たっぷりタメをつくり想いをたくわえているようにも。
ひと筋の煙が、静かにぬくみをもって
彼岸と此岸をやわらかにつないでいる。
(句集『犬小屋の中に入ってゆく鎖』 德永政二
2018年 新葉館出版)
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