自転車に結婚式がまたがって
千春
恋人との二人乗り、かな。
それは二人だけの結婚式。
そしてこんな結婚式なら毎日挙げたっていい。
スピードを上げると、
二人のTシャツの袖がふるふる、ハタハタして、
風は今日も祝福してくれているみたい。
ふと映画「明日に向かって撃て!」の、
自転車の名シーンがよみがえった。
もちろん時代も設定も全然違うのだけれど、
掲句もまた、口ずさむたび、
みずみずしく脳裡に再生されることだろう。
折々に素敵なBGMと
ちょっぴりのせつなさをともなって。
出典は千春さんの作品集『てとてと』。
川柳と短歌と詩が収載されている。
日常もわが肉体も、宇宙の一部であり
宇宙はまた肉体の中に広がるものでもある。
日々のささやかな営みが、すべて
ひりひりと愛おしくなるような、
そんな千春さんならではの世界観に浸れる一冊です。
風邪ひいて真昼の月の体温計
大空にじゃこを投げたらどうですか
トトロ忌が二千年後にやってくる
冷やむぎ冷やむぎ冷やむぎ光と闇
バス停に待っててくれた猫のてと
仕事して少しは空になれたかな稜線きれい白髪もきれい
『てとてと』、残部僅少のようです。
くわしくは、千春さんのtwitterまで。
@chiharuharusan
(『てとてと』 千春/2020 私家本工房)
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