マンボウの通りすがりの高笑い
落合魯忠
高笑いされたいなあと思う。
マンボウになら。
巨体ゆらめかせながら
なんじゃ、そんなことで悩んでおるんかい、
ともろもろ、笑い飛ばしてもらえたら。
本作は「ゆに」の新会員、落合魯忠さんの句集『オンコリンカス』から引く。
句集巻末の「自伝的エッセイ ーオンコリンカス的生涯を巡って」によれば、
著者は、海の男。
北太平洋を漁場とするサケマス漁業の船団の船員、
というかつてのプロフィールを伺わせる作品を軸に、
ページからは印象的な景が次々に立ち上がる。
ララバイの果てに浮き出た蜃気楼
納得のいくはずのない沖に出る
名月を寝転んで見るカムチャッカ
ジュラ紀ではぼくたちだって飛んだ空
ちなみに、タイトルの「オンコリンカス」とはサケの学名だそう。
吹きすさぶ月下の海の鼻曲がり
エッセイには
「鼻曲がりは河川に遡上する雄のサケの呼称だが、
約四年にもわたる回遊の果ての雄々しい姿で、
サケの学名オンコリンカスは(カギ状の鼻)に由来する」
とも記されている。
(句集『オンコリンカス』落合魯忠 私家版 2022)
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