塹壕か畑か深く深く掘る
佐藤みさ子
「What’s」Vol.4(編集発行人 広瀬ちえみ)が発行された。
毎号、会員作品20句&エッセイや
興味深い記事、鑑賞等で構成され、
本作は佐藤みさ子20句より引く。
冒頭、不意に立ち現れた「塹壕」の現実味。
それは遠い過去や他国のもののみにあらず、
まったくわが国もいつ何が起こるかわからない、
という危機感が
ガツンと十七音に凝縮されている。
深く深くのリフレインが、
振り下ろす一回一回の重みとなって胸に響く。
以下も会員作品より。
梅咲いてハシビロコウに辿り着く 加藤久子
コンペイトウの形を目指す兵器 竹井紫乙
はきはきとミモザの路地のこどもかな 叶 裕
這っていったとおりに傷痕はひかる 鈴木節子
苺摘む乱数表はうらはらに 妹尾 凛
山彦は一升瓶の中からも 水本石華
約束を破ったからには家来とな 鈴木逸志
大根半分嘘も大概に 中内火星
こぼれたわよと美川憲一ふうに言う 浮 千草
三月の青がまぶしく吊るされる 鈴木せつ子
春光や有楽町の靴の音 川村研治
非常口で拾うキャラメルのおまけ 月波与生
産むことは青ざめること朝桜 原 ゆき
老人のように扱われる小銭 高橋かづき
伝言がちがってソースかけちゃって 広瀬ちえみ
そして巻頭を飾るのは、今回の招待作家、浪越靖政さん。
卍固め外れてからの一周忌 浪越靖政
(「What’s」Vol.4 2023年4月)
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