落ちつけと𠮟ってくれた黒電話
伊藤聖子
昭和人の、ある年代以上には
一読、ああとうなずける一句だろう。
ちょっと遠い目をして。
かつてどの家でも使っていた黒電話、
ことダイヤル式の黒い固定電話は、
はるか昔、わが実家にもあった。
主人公も、なにかのっぴきならない事態に陥って
思わず実家に電話にしてしまったか。
あるいは頼りにしている大先輩か。
ともあれ「落ちつけ」。
このたったひと言がどれだけ心強く響いたことだろう。
窮地を救ってくれた一喝は
今もときどきふっとよみがえっては
胸のうちを落ち着かせてくれる、声のお守りかも。
(『現代川柳かもめ舎アンソロジー WAVE 2009-2018』
現代川柳かもめ舎 2018)
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