踊れ踊れみんな写楽になっちまえ
むさし
なんで写楽、と問い返す間もなく、
句の熱気に呑み込まれる。
当方ただの通りすがりで
一体なんの祭かも、ようわかっていない。
なのに、いざなわれるまま
見よう見まねで踊り、練り歩けば、
この世の憂さもひととき晴れるや。
いやしかし「写楽になっちまえ」がやはり気になる。
「写楽」はご存じ江戸の浮世絵師・写楽その人を指すのか。
もっとも写楽は、出自や経歴についても
いろいろと研究が続く「謎の絵師」。
一方、写楽の作品を指しているならば、
あの役者絵のポーズよろしく
ぱっと両手ひらいて踊りおどけてみればいいのか
・・とかいったリクツをふきとばす「写楽」の説得力。
ここはもう、なっちまうしかないだろう。
出典は青森県川柳連盟が今年6月に発行した
『青森縣川柳年鑑 ねぶた 2023年(第4集)』。
一人十句、199名の個性ずらりと
最新版も読み応えたっぷりのアンソロジーです。
雫から小さな船が出て行った 菊池 京
許すとは春の林檎のやわらかさ 熊谷冬鼓
通帳の残は残酷ものがたり 髙瀨霜石
減っていく鮭にサンマに鯉のぼり 濱山哲也
風とあそぶヒント下さい猫じゃらし 福田文音
元気でねひっつき虫を背に飛ばす 藤田めぐみ
置き去りの自転車 置き去りの戦車 守田啓子
(『青森縣川柳年鑑 ねぶた 2023年(第4集)』
青森県川柳連盟 2023年)
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