Vol. 116 酢 

 「酢」の語源は、酒を口に含んだときに、酸っぱさのために口を窄(すぼ)めたことから「窄める」からきたとする説、酢と酒は部首が同じで関連性があり、酒が日数を重ねたものの意味、その酒を「作る」ということから「酢」という説等、諸説ある。

 酢は紀元前5000年頃にバビロニアで製造されたという記録がある。人類が作り出した最古の調味料とされる。

 この時代、人々は干しぶどうやナツメヤシなどから酒をつくっていたという記録があり、同じ頃、酢も誕生したと言われている。果物や穀物を蓄えている間にアルコールができ、さらに自然の酢酸菌が作用して、偶然誕生した。

 日本には、中国から4、5世紀頃に、酒を造る技術とともに米酢の醸造技術が伝えられたのがはじまりと言われている。江戸時代までは上流階級だけが口にすることができたが、江戸時代以降、味噌や醤油とともに庶民に普及していった。

 この頃に生まれたお酢を使った代表的な料理が「お寿司」。 幕末になると「にぎり寿司」や「いなり寿司」が誕生し、庶民の間で大変な人気を集めた。

  掛け違うボタンほんのり酢の匂い  須藤しんのすけ