原始の時代、人間にとって「走る」とは「生きる」ことであった。狩猟により、その日の食糧を得ていた時代、人間は動物と走力を競うことが、そのまま生きることにつながっていた。
狩猟には、骨等を利用した投げ槍が使用されていたが、槍が野牛等大きな獲物に命中しなかった場合、追いかけられて「走って」逃げるよりほかに、身を守る術はなかった。走力の優れた馬と出会い、狩猟や戦いに馬を利用するまで、ひたすら「走って」狩猟して、「走って」逃げていた。
「走」の象形の文字は、両手を振って走る人の形による。走の上部は人が手を振って走る形の「夭(よう)」、下部は「止(足あとの形)」で走ることを表している。今の「走」の上部は簡略化されて「土」になっていて、古い字形では「夭」。
私が最近、走ったのは、駆け込み乗車、信号が赤に変わりそうになる交差点…。そろそろ、走るのがあぶないお年頃である。
一粒のグリコでいまも走っている 中条節子