憧れて甘えて手紙だけ残る
坪井篤子
憧れて甘えて。
この「甘えて」のはたらきに注目する。
憧れて甘えて。
リズム良く連なりながら
「甘えて」がふっと句を濃厚にして、
そしていったんここで溜めをつくって
次の意外性ある展開へ。
相手は先輩、友人、あるいは師。
恋の句とも読めるし、
そうではなく、シンプルに憧れの対象だったとも。
写真やメールでなく
「手紙」というのが趣深い。
文をかわしあったその人は、もうどこまで遠いのか。
ひと粒の極上チョコレートのように、
噛みしめれば甘くほろ苦く、後味がきれい。
(季刊「現代川柳 かもめ舎」第59号/2023年10月)
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