何もかもワカランなったヴァイオリン
石野りこ
ワカランなった、が
ヴァイオリンの舌足らずなモノローグだとしたら、
キュートだけれど、ちょっと気がかり。
いつもきちんとした優等生だから。
そんなヴァイオリンをもって、
作者は楽譜を書くように一句にしている。
「何もかも」は、なんもかも、と読みたく、
なんもかも、ワカランなった、ヴァイオリン。
「ん」「ン」が、音をまろやかにつないで
おしまいも「リン」と澄んでいる。
調べがやさしい。
けれど、ふと。
「何もかも」には、地球まるごとすっぽり入っていそうな気もして
ドキリとした。
ヴァイオリンは時代や国境を超えて
愛され続けている楽器だから。
本作は、「ゆに」の今月の会員作品から。
(ゆに 2023年10月)
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