ゴジラの子ひそかに育つ真葛原
愛されようが愛されまいが出るキノコ
カァカァカァみんな自分を語りたい
浅井ゆず
冬の虹見えたので就職試験やめ
紹介はキャンセルしたく冬の虹
あの猫の耳毛深くて悩む恋
朝倉晴美
太いほうのバンドエイドだ取り急ぎ
オカノサン赤の太字になってゆく
ワルモノが配られてくるお正月
石野りこ
溜息を巻き戻してる青リンゴ
長く書く長く怒りの日記帳
フィクションを2割ほど入れ最終話
伊藤聖子
アボガドの種を割りたい日曜日
昼寝するように崩れる秘境駅
白菜のサラダに添える昼の月
伊藤良彦
ハラハラを避けて無言の行つづく
甘い汁たっぷり吸って歩く嘘
降る紅葉赤光浴びてヒーリング
稲葉良岩
朗々としゃべる果実に負けている
あるがまま花瓶に暮らす岸恵子
生まれたての火 ローソクをたべている
岩田多佳子
ときめきの言葉が消えたおもちゃ箱
薔薇を抜く勇気があれば無敵だね
揺り椅子に支えられているか矜持
海野エリー
冬が来る急いで鯨踏みにいく
ポケットに朝焼け二つ金木犀
明け方の雨音きっと金木犀
おおさわほてる
無理ですと寸胴鍋に拒否される
カサカサの葉っぱはやはり無効票
褒められも責められもせず立っている
小原由佳
居ずまいを正して鬼の面を脱ぐ
生き切って蟷螂の翅透き通る
こんな夜は浮世草子に紛れ込む
笠嶋恵美子
新しい息で倒してみるドミノ
もうええか ええやんと玉ねぎを剥く
ユートピア行きの羊雲に乗った
桂 晶月
二つとも諦め香るカモミール
リビングが絶壁になる夕間暮れ
欠けていく月とようやくお友達
川田由紀子
言い草はロスアラモスの丘の上
皿の数かさね現実逃避する
トラックが運んでいった茜雲
河村啓子
理を喰む肥厚したくちばしで
手前取りを乞う溶け残りの時間
擦過音どれもが生きている証
菊池 京
わたくしの姫度小吉姫みくじ
鉢かづき姫と双子さ玉の輿
春来たら海の鳥居で殿方と
北川清子
流星群 なんて小さい悩みごと
切っ先が私に向いて冬薔薇
白鳥座あたりに君がいるらしい
黒川佳津子
薄墨のヴェール 今年の終い方
めぐりきて量子の泉にて逢はむ
語りあう後世の菓子など持ち寄って
黒田弥生
ステレオの誘導棒に歩をふたつ
睨んでも車は深くお辞儀する
脱皮し損ねキリギリスの冬ごもり
河野潤々
水色の光ぐわんと散らす羽
スタンプを押す人は人でありたくて
目を肥やす目にも二三度ゆりもどし
斉尾くにこ
飛行機に遅れるイヤイヤ期の父
ねぎ塩だれはあらてしんての宮大工
メラニンをいたわるためのレモンの木
澤野優美子
夜が来る誰もいないと思わせて
何もせぬ間に柿の実が落ちている
何というものでもなくて栗ごはん
重森恒雄
カミさんの朝礼のある日曜日
金木犀 飛び立つ決意風見鶏
淋しさの隣が空いている日記
杉山昌善
マニキュアを塗ってイエスと手をつなぐ
母が死ぬなんでもない日午後は雨
サインする嫌いな辞書の裏表紙
須藤しんのすけ
ラムサール条約生きる谷津干潟
ラムサール条約ニンゲンも救う
数を見よ干潟に生きる渡り鳥
田尾八女
サンタもサタンもまず入管へ行かされる
クリリンのことかと問われ黙秘する
ご覧のスポンサーの提供で終わらない戦争
たかすかまさゆき
生きてきて右３０度ずれる臍
ジャイアントパンダに同調する周期
氏素性受け入れられぬイヌフグリ
浪越靖政
第二版、第三版と銀杏散る
鉄筋を組む寂しさの骨格に
夜渉る路線を点す星は駅
西田雅子
日傘ほどにはお邪魔にならないわ
一部だけ風であとはひかりの君
後方支援はどんぐりと夕焼けよ
西山奈津実
返信のないまま白鳥の飛来
みんなから言質取られるキムチ鍋
脚注にひょいと顔出す雪兎
芳賀博子
深呼吸胸がチクッとバルコニー
思い出の実家あとかたなく更地
あと少し浮草となり星月夜
林 操
成仏ができず史跡の枯れ尾花
薬飲み終えて誉めたろか自分
肩書のお品書きですさあどうぞ
飛伝応
取り扱い注意プライド見栄嫉妬
少子化が進む格差が広がって
どうしよう対向車線から殺意
平尾正人
誤注文今年のカレンダー届く
パソコンや弁明無用再トライ
生きてますか夕焼けに問う雲に問う
弘津秋の子
もう夕映えコップに沈めましょ宴
面白くないわまったく淋しいわ
アイコンがくるり架空の秘密基地
藤田めぐみ
片側のふくれっ面が離れない
母に会いたくて霊能者を訪ね
晩秋は汚れていない鐘の音
藤山竜骨
勝手もん暇が出来れば縄のれん
王ちゃんと小鳥呼んだら老妻（つま）嫉妬
斜に構え拗ねて這いずるあぶれ者
堀本のりひろ
何者になってもいいや接続詞
長音は先に食べたよブロッコリ
お友達いいえ知り合いです冬日
真島久美子
ひなたぼこオフシーズンの金魚鉢
本当を二重包装にして贈る
わたくしの影が痛がるから解散
峯島 妙
ヒルヤモリ可愛いと言うきみの眉
風船ガムぱちんちゃんと晴れたでしょ
この先を左折とだけの道しるべ
宮井いずみ
真実を乗せた気球は風まかせ
ぜんざいに餅二つ入れ文化の日
ガチャガチャでゴロンとリーダー産み落とす
村田もとこ
すみずみの夜がまぶしい嘘みたい
あの人に見せたいものがたまってく
地下鉄にパンのにおいのする人だ
本海万里絵
白と黒 水で薄めた仲になる
アボカドで両耳をふさいで無敵
長くなる人影 豆は粗く挽く
森平洋子
ドンドンと三人組が戸を叩く
乾かない傷を逆撫でされている
研ぎ終えて切れ味試す肥後守
森 廣子
視線外せばこなごなに散る暮秋
パレードは角を曲がって小糠雨
保護色は薄墨色と決めている
山崎夫美子
歩きましょう二人合わせて一万歩
女性から声かけられた北野坂
同窓会 墓の話で盛り上がる
吉田利秋
パンプキンパイの中にも戦闘地
濡れ紅葉言いたいこともあったでしょうに
あんなにも軽やかに手を振るきのう
四ツ屋いずみ
三分の二カーテン閉めるわたしです
3ヶ月人間やめていいんです
大空に果たしたいことを描く
渡辺かおる
陽を浴びて母を濃くして雪を嗅ぐ
てんてんと燠火咲かせている闇夜
枯れながら息ととのえて陽が昇る
吾亦紅
ボーイミーツガール冬苺てのひら
外套を脱ぐように戦乱に入る
微電流壊れた瓦美しき
阿川マサコ
