Vol. 224 鼻

「鼻」という字の成り立ちは、古代中国人の身振りや生活感覚と深く結びついている。

三千年以上前、「鼻」の字を構成している「自」という字は、本来それだけで「鼻」を表す象形文字だった。突き出た鼻の形から生まれている。

しかし、人々が自分を指すときに鼻を差す習慣があったため、「自」はやがて「おのれ・みずから」を意味するようになり、その結果、「鼻」を表す文字が失われてしまい、「はな」を表す現在の「鼻」という字を新たに作ることになった。

その際「自」は残され、その下に鼻息を表す擬音「(=田+廾)」が加えられた。

ちなみに、欧米では「自分」を表すのに、胸に手を当てるのに対し、東アジアでは鼻を指すという文化的な違いがある。

  取り替えてやりたいような鼻に会い 絃一郎