歌舞伎座を出て月光をホテルまで
淡路放生
わが年来の推しの作家、淡路放生氏が
「川柳葦群」新年号に発表された作品から引く。
歌舞伎座での観劇は、このたびの東京見物で
きっとことにも楽しみにしていた一つ。
はたして舞台はまこと華やかに
別世界を堪能させてくれたことだろう。
が、句はそこからの、
そう、歌舞伎座を出てからのひとときを描いて
いっそう美しいドラマをみせる。
さても良き月夜である。
月光をやわらかに浴びて
少し火照りをさますように余韻に浸りながら、
ホテルまでをゆっくりと歩いて戻る。
旅の感傷も相まって、
人生のいくつかのシーンが
ふっとしみじみと過ったりもしただろうか。
掲句、韻文ならではの省略が冴え、
句姿そのものが練達の歌舞伎役者のごとく
ひと目で艶やかに印象を残す。
(「川柳葦群」第76号 2026年1月)
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